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□恋人。
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『彼女を放っておいていいの?』
一味の宴好きにはほとほと呆れ気味ではあったが、万更でもない自分がいるのも確か。
宴もたけなわ、一服をしに一人外へ出て手摺りに寄りかかっていると、後ろで扉の開く音。
振り向くと、微笑を浮かべて佇む、うちのクールビューティー。
『ん?あ、ロビンちゃん。』
視線は合わず、彼女の目線の先を追う。
『まったく。こうゆう時にはいつの間にか、あぁなんだから』
酒の強いクルーの代表、ナミさんと、よりにもよって、あのクソまりも。
2人はよく、あんな風に呑み直す。
付き合いきれるのがお互いしかいないのだ。
文句めいたセリフでも、彼女の口調と顔から、本気で怒っているわけではないことは解る。
『ロビンちゃんこそ、いいの?放っておいて。』
俺は手摺りに頬杖をつきながら、彼女と同じ方を眺める。
彼女は俺の隣に一歩踏み出し、手摺りに手をかけた。
『大丈夫よ。何かあったら、あなたが彼から彼女を力づくで引き剥がしてくれるでしょう?』
くすくすと笑いながら彼女はおどける。
『そりゃもちろん。で、俺も同じさ。何かあったら君が、あいつをひねってくれるんだろう?』
タバコをくわえたまま俺も笑った。
『ねぇロビンちゃん。あいつのどこが良かったの?』
『あら、無粋ね。好いた惚れたは他人には解らないものよ?』
『んー、そりゃ解ってるつもりだが…なんてゆうか、気になって』
ぼーっと2人を眺めながら、頭に浮かんだことを聞いてみた。
少し酔っているのかもしれない。
『そうね…ありきたりな気もするけど、ギャップ、かしら。』
『ギャップ?』
思いもよらない答えに、俺は思わず聞き返す。
『えぇ。彼、最初はわたしを一番警戒していたでしょう?でも、仲間と認めてもらえてからは、真逆だったの。』
単純でしょう?と彼女はまたクスクスと笑った。
瞬間に見えた表情は、年上であることを忘れるような、“かわいい”それ。
あぁ、まじで惚れてんだな、となぜか俺まで何とも言えない幸福感に包まれた気がした。
が、相手を思い出した瞬間には苦笑するしかなかった。