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□恋人。U
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『てめぇはなんだっていつもおれを付き合わす』
芝生の上で星を見上げて、ジョッキを空けた所で渋い声。
『あんたその声、一体いくつよ』
年寄りくさいとか言いたいわけじゃない。はっきり言って、いい声だと思うけど。
しかし年相応とは言えない。
『てめぇとたいして変わらねぇはずだが』
いくら呑んでも顔色ひとつ変えないこの男は、今日もいつも通り、仏頂面で答えた。
『変わるわ。…18と19って、結構違う…』
コクリ、と両手で握ったグラスの酒をひとくち。
『あ?なにがだ。』
元々寄っている眉間の皺をいっそう深めて、ゾロはわたしを睨む。
その辺の海賊やら海兵やらなら、縮み上がるようなこの眼光にも、もう慣れっこだ。
『大人ぶったってさ、どんな経験してきたってさ、18は19より、子供なのよ』
ぼーっと、見慣れた緑の腹巻きを視界に入れてみたが、焦点は合わずにぼやける。芝生だか腹巻きだかゾロの頭だか、よくわかんない。
『…あいつと何かあったのか』
ゾロはめんどくさそうに頭をガシガシ掻いてから、ボソッと呟くように聞いた。
『…べつにぃー。何も。なーんにもない。わたしが理不尽に怒っても、機嫌悪くなっても、無駄にテンション上がっても。ただニコニコしてるだけ。なーんでも許してくれるのよ。いいよ、って。大丈夫だよ、って。』
なんだか自分でも知らないうちにヒートアップしてきた。
でも止まらない。止める気も起きない。
『完全にあたしがワガママな時もよ?いいよーって。何よそれ、いいわけないじゃない!ちょっとはさ、プライドとかさ、』
『おい呑み過ぎだ』
滅多に止めないゾロが口を挟んでわたしのマシンガンを止めた。そんなにヒートアップしてたかしら。
半分立ち上がりそうになっていたわたしは、ゾロの言葉に大人しく座り直した。
『年下ってさ、疲れる?』
『あ?』
『年下なんてあり得ない?本気になんか、なるわけない?』
普段ならこの男相手にこんな質問、それこそあり得ない。
頭では思ったが、聞いてみたい衝動の方が大きくて、おかしなテンションに任せて聞いた。