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□TAKE MY HAND,Darling!
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手をひいて。
前へ。
久しぶりの上陸だから、今日は自由行動だ、なんて、船長が珍しい提案をしたから。
いや、珍しいのは提案の中身というより、船長が上陸の際に、提案をしたことそのものだ。
いつもなら島に着くなり『すっげーーー!』とか言いながら勝手に飛び出していくだけの、あいつが。
少しはキャプテンとしての自覚が出来たのかしら、もしくはほんのちょっとだけ大人になったってこと?
と、そこまで考えて、ため息。
そんなことはどうでもいい。
そんなことよりわたしの今のこの状況。
ひとり全速力で見知らぬ街を疾走しながら、頭の中は妙に冷静。
あぁ、買い物中のおばさま、そんな奇人を見るような目でわたしを見ないで。
あら、そこのちびっこ、驚かせてごめんね、でも今は止まれないの。
繁華街とも呼べる街を全力疾走するわたしへと注がれるたくさんの視線は、まさに好奇なものを見るそれで。
余計にこの場で止まるわけにはいかない状況にしているのもまた自分自身。
幸いまだ息はあがっていない。若いって素晴らしいわ。
とにかくこのまま街を抜けるまで……に、あとどのくらいかかるのか検討もつかないけど。
なかばヤケクソでわたしは走る。