■蒼夏の螺旋 3

□お互い様な夏至
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日本では
雨季かと思うほど
雨の多い頃合いの終盤に、
一年のうちで
一番昼が長い日がやって来て。
でも、夏はこれからなのになと
小首を傾げておれば。
冬の冬至だってそうだろが、
それからが本格的に寒くなんだからな、
小理屈なんかじゃねぇんだろうよと、
懐かしい声が
そんな風に答えてくれたのは………


  「……はにゃ?」


深夜のニュースを観ながら
寝オチしたから、
それで見られた夢かしら。
だって、

 “イブニングエンドの
  ナレーションの人、
  サンジと声が似てるもんなぁ。”

もしかしてそれって、
ヒラタ某さんと言いませんか?(笑)
アニメに海外ドラマに
引っ張りだこな忙しさで、
劇団のお仕事はいつやってんだと
思うほどの露出だというに、
最近、中井某さんみたいに
あちこちで
ナレーションもやってはりますものねぇvv

  という、脱線はともかく。

雨になれば
油断のならない肌寒さが
戻ってくるものだから、
ちょっと健康に自信のない
お年頃の方々だったりすると、
あたしゃ騙されないんだからねと、
まだまだ肩掛けやカーディガン、
合掛け布団なんぞを
仕舞わずにいらしたりするような。
ちょっとくどい
関西の●本興業のギャグみたいな繰り返しへ、
律義にも付き合ってのこと、
しっかと用心していなさるが。
元気が一番なお若い方々ともなれば、
多少は読み違えてしまい、
うっかり鼻風邪引いても
ダイジョブダイジョブと言わんばかり。
一足早い真夏の装いで、
陽の照る中を軽快に
駆け回ったりもしておいで。
最近は浜辺の装いを町中で着ていても
行儀が悪いと
柳眉を立てる方が野暮なんだそうで。
夕涼み、よくぞ男に生まれけり
とか言って、
男だからこそ、
ステテコ姿というチョー軽装で
表へ出した床几に腰掛けててよかったのは
もう過去のお話。
今や、
それって水着ですか
下着じゃないんですかと
同性でも困りそうな
あられもない格好で、
昼間の繁華街を闊歩する、
お嬢さんたちも
少なくはない時勢ですからねぇ。


 「……で、
  それはどういう冗談だ。」


実はきっとうっすら怒っているのだろうに、
何とも響きのいいお声で、
わたくし、
あなたへ問いただして
おりますことよというの、
彼なりの言い回しで
突き付けているゾロなのは。
お帰り〜っとお出迎えしてくれた奥方が、
何とも奇天烈ないで立ちだったのへ、
ギョッとしたからに他ならぬ。

 「え?え? 何が?」

さあさあ上がって、こっちへおいでと
先導よろしく先にリビングへと戻りつつ、
よく判んな〜いっと
素っ途惚けているものの。
しなやかな肉付きの二の腕へ
スルリと艶っぽく落ちかかったは、
メッシュのジレの肩口で。
それをちょいと直して見せる辺り、

 “確信犯としか言いようがないぞ”と

それでなくともいかつい造作のお顔を、
どこの頑迷な職人さんとの真摯さ論破でも
きっと見せなんだくらいに
引き締めたものだから、

 「ゾロ、三白眼は反則。」
 「うっせぇなっ。」

今日は豚の串焼きと石焼きビビンバだぞ、
柔らかくなるよう
酒とショウガ汁に漬け込んだのを、
回鍋肉用の味噌ダレにつけて
焼いてあっから、
そりゃあもうもう飯が進むぞと、
言ってる端から
“ああ口の中が冠水しそう…”なんて
自分でボケつつ
とっととご飯へ
なだれ込もうとしている奥方だけれども、

 「だから、
  そのふざけた格好は
  どうしたと訊いてんだ。」

 「ココナッツパルフェの今年の新作の、
  ビスチェとネットジレ、
  ショートパンツと合わせた
  夏のアレンジで〜す。」

昨年レースやオーガンジーといった
透ける素材が流行ったのの名残りか、
今年も似たようなのの
レイヤーファッションが流行るそうで。

 「レイヤー…。」
 「判るように言うと、重ね着だ。」



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