■蒼夏の螺旋 3

□キスが甘いとは限らない
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体の具合が悪いなら、
急いで岸本せんせえに診てもらわんとと、
脱ぎかけていた背広の肩を戻し、
書類ケースだけ
空いてるソファーへ放りかけたが、

 「………………お。」

その空いてた空間へ、
無造作に放り出されたてあった先客があり。
淡い色合いのパッケージングは
女性にも安心という雰囲気を
強調したかったものか。
収録されている中へと出演する
俳優の顔やシルエットは使わぬままの、
いかにも
イメージ優先というのを窺わせる、
1枚のDVDであり。

 「こんなところへ
  出しっ放しにしといたかなぁ。」

そうと呟いて手に取ったのへ、
ルフィ奥様、
むむうと口許を尖らせての曰く、

 「そんなふしだらなDVD、
  ゾロが観てるなんて がっかりだっ。」

お顔をやや真っ赤にしての非難囂々。
ふしだらと来た辺り、
男性だもん しょうがないじゃん
…という方向性のそれだろか。
だとしても、同じ性別なのだから、
しょうがないよな
判らんでもない…とは思わないのが、

 「オレってものが
  ありながら。////////」

ちゃんと毎晩、
ちうだって ぎゅうだってしてんのに。
そりゃ、オレからは
あんまりアレコレ出来ねぇけどサ、
それはゾロが、どこで覚えたのやら、
あんなことやこんなことして、
あっと言う間に動けなくす……

 「判った判った。」

窓も開いてるんだから、
あんまり大きな声で
そういうことを並べないの、と。
それは素早く傍までを進み、
あっと言う間に
口許を手で塞ぐ手際は大したもの。
そうか、そういう手慣れた手際で、
あんなことやこんなことを
してるんだな、あんた。

 “…おいおい。”

小さな奥方を、
その身長に見合った長さの腕にて
ぐるんと抱きかかえつつの、
お口封じの技の発動だったので、
ちょっと変わった
ヘッドロックのようなもの。
それゆえに、
懐ろの中へと抱え込んだ格好の
ルフィの目の前に、
もう片やの手に持ったままだった
DVDが来ており。
むうと膨れたまんまの奥方、
それを奪おうと手を伸ばしたものの、
間一髪で遠ざけられてしまい、

 「そうは言うけど、
  お前、これの中身観たのか?」

 「観てねぇけど、
  知ってるもん。//////」

そんなお返事へ、
おやとゾロの表情が軽く撥ねる。

  バレンタインデーのころに、
  朝のワイドショーで
  特集してたじゃんか。

  ああ、そうだっけな。

となると、
どういう内容なのかも知っており、
イメージから勝手に
誤解しているようでもなくて。
しかも、

 「しかも堂々と、
  ゴーカイジャーの
  DVDボックスの隣に
  置いとくなんてよっ。」

そう。
疚しいからと どっかにこっそり
隠してあった訳じゃあない。
共有のCDやDVDの棚へ、
それは無造作に差してあった
扱いの軽さよ。
つか、ゴーカイジャーは
どっちの所有なんでしょうか。
(わざわざ訊くか・笑)

 「こういうものは、
  ベッドの下の奥に
  押し込んどくとか、
  引き出しを外した
  その奥に忍ばせておくとか。」

 「お前こそ、
  どこでそういう知識を
  仕入れるかな。」

まさか小学生から聞いたとか言うなよ、
順番おかしいぞ、お前。
そんなこと
話題にしませんよーだ、と。
それはそれは可愛らしい
“あっかんべぇ”を返した奥方が、
ゾロの手の先、
むうと睨んでおいでのDVDというのは、

 萌えとときめきの キス&ハグシーン集
  St.バレンタインデーに贈る、
  スペシャル Ver.

そうと銘打たれた、
オムニバス形式の
ソフトなラブシーン集だったりし。
……あ、今そこでコケた人、
一体 何を期待してましたか? 
後で職員室に来なさい。

 「何で こんなもん観るんだよぉ。」

実はこういう
焦れったいプレイが好きなんか?
だったら言えば良いのによ。
マフラーぐるぐる巻きとか
シャツの肘つまんでツンツンとか、
いくらでもやってやんのによ、と。
その程度の内容のですので、
どかご安心を、どっかのお母様。(笑)

 「プレイってなぁ…。」

どういう方向で
怒っておいでかよく判らんと、
ゾロが呆れたのも無理はなく。
その発言のところどこで
妙な地雷がドカンドカンしてないかと
思いつつ、

 「俺の担当じゃあないんだがな。」



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