■蒼夏の螺旋 3

□感謝してます、激烈にvv
1ページ/2ページ


すぐ前のお話でも扱いましたが、
いかにもな語呂合わせ、
11月22日は日本では
“いい夫婦の日”とされており。
それからそれから、
12月3日は何と“妻の日”とされていて、
日ごろ、家事や育児に
頑張ってくれておいでの奥様へ、
その頑張りをねぎらい、
無辜の愛へ感謝して、
亭主からチューリップを贈るのだとか。

 “わいふ、サンキューってか?”

これから歳末のあれこれで
いっぱい忙しいって時に
なんでまたと思いもするが。
だからこその どさまぎでないと
日本のシャイな亭主たちは
“ありがとう”なんて
こっ恥ずかくって言えないものか。
それとも…忘年会じゃ何じゃと、
呑み会が立て続き、
帰りが遅くなりまくる前に
ゴマ摺っとけという
予防線ででもあるものか。(こらこら)

 “まあ、クリスマスケーキ自体が、
  そういう罪滅ぼしから
  始まった品だしなぁ。”

近年隆盛のハロウィン同様、
それほど
クリスチャンも居なかった日本で、
俳句の季語になるほどに、
がっつりとクリスマスが定着したのは
どうしてかと言えば。
納会だ忘年会だへは
ウチのお店へお越しと
熱心にお誘いしまくったその筋の方々が、
お父さんがたが株を下げぬよう、
ご家族にお土産としてこれをと
勧めたのがケーキだったから。

 西欧では今夜はクリスマスと言って、
 みんなでケーキ囲んで祝うらしいぞ、と

いかにも女性や子供が喜びそうで、
当時は高級品でもあったケーキを
“付き物だから”と供したことが
始まりだとされており。
ちょっぴり堅いスポンジに
バタークリームが主流だったケーキが、
今や本場の外国の方々もびっくりの
フレッシュな芸術品とまで
持て囃されるまでへ進化したその発端が、
本来 寿司折りみやげの
“師走バージョン”だったとはねぇ。(笑)

 “まあ ウチはその辺のケアは
  ばっちりなんだけど。”

伊達に企画部の一班を
任されちゃあいない、ロロノア係長。
当社では別の班が引き受けた、
某チェーンの奥様への花束キャンペーンと、
某社の
アソートケーキセット・キャンペーンに、
ちゃっかりとエントリーしてあるから、
当日の午後あたりに両方とも
自宅へ届くこととなっているし、

 “あとは、
  この伊勢エビやオマールエビやの
  海鮮一式を
  特選おせちの調理工場まで
  何とか届けてだな。”

近海で
腕のいい漁師さんが仕留めましたという、
顔の見えるシリーズ
“海鮮おせち”Ver.なんてな、
今時のほにゃららな御時勢に
何とも微妙なプランを、
出すだけ出して…
コネも伝手もないんです
どうしましょうと言い出した、
何とも情けない後輩から泣きつかれ。
しょうがねぇなと伊豆を駆け回り、
知り合いの漁師さんたちを
拝みまくって船を出してもらって、
ちょいと沖に浮かぶとある島の港から
漁に出てもらい。
新鮮で大ぶりな伊勢エビとそれから、
こちらもメニューへ
載せちゃったんですという
オマールエビを掻き集め、

  ……たは いいのだが。

漁の間は何とか保っていた海だったのに、
いったん港へ戻った途端に荒れまくり。
ブツは冷凍したからまだいい。
12月半ばにでも間に合えば、
おせち料理なので支障はないが、

 “俺が戻れないってのは
  計算外だったなぁ。”

予定していた昨日のうちに
戻れなかったのへは、
勿論のこと連絡を入れた。

 『もうもう、この奥州筆頭が〜。』

日頃の行いが出るんだぞ、
そおいうのは、と。
あの豪快なルフィにしては
神妙な言い方でお叱りを下さり。
無理しないでいいからな、
時化(シケ)が収まってから
戻ってこいなと、
言わずともなことをわざわざ言ったのは、
でも
逢いたいというのの裏返しかも。

 “…ってのは、
  確かめようがないんだが。”

電波の状態も悪いのか、
今日は何と
通話どころかメールも出来なくなった
有り様で。
ド演歌のPVに使えそうなほどの迫力で、
大人の身長も凌駕せんとの高さと分厚さ、
どっぱんと岩礁へ叩きつける
波濤を睨みつけ、
大荒れの海とにらめっこ。
今日はまだ2日だ、当日は明日だから、
それまでに何とか静まれ太平洋よと。
よろめきもたじろぎもしないまま、
岸壁から海を睨んでおいでのお客人へ、
漁師の皆様も何だどうしたと
関心を寄せておれば、

 【ばっきゃろーっ、
  こんのクソ亭主がっ!】

 「ああ"〜√」



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ