■蒼夏の螺旋 3

□ライオンがやって来た?
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一年のうちで
最も寒いとされる頃合いにやってくるからか、
二月は、
如月を“衣更着(ころもを更に着る)”と
書いたりもしたそうだし、
実際は“大寒”のころ、
一月下旬が寒いのだけれど、
いやいや油断しちゃいかんということか、
二月の方が寒い印象も強くて。
そんなせいか、
獅子の様に襲い来て、
ウサギのように
駈け去る月とも言われているほど。

 “まあ、この冬は
  12月から寒かったしな。”

もこもこの重ね着姿を
気に入ってるルフィさんなものだから、
そういうカッコが
自然にこなせて嬉しいとか言ってたなぁと。
懐へ埋まっておいでの
ふわふかな頬をつつんと突付く。
鈍感な方じゃあなかった筈だが、
さすがに熟睡中か、
うにゅとも唸らず、
何の反応もない寝顔はたいそう安らか。
肌合いが柔らかだというだけじゃあなくて、
二十代男子とは思えぬ小柄さに見合った、
まろやかな輪郭をした肢体にそぐう、
そりゃあ無邪気な気性の奥方は、
ライオン級の寒波が来たとて
身をすくめるどころか、

 “ごっそり着込んで
  飛び出してきそうだしな。”

土曜や週末も
休みと限らぬ身のご亭主だが、
今日明日のイベントは、
企画側で直前まで奔走したので
現場には出ずともいい立場だしと、
のんびりする気満々でいたのだけれど。

 「…うにゅい。」

何かつぶやいたものか、
頬っぺがこそばゆい仔猫みたいに
こちらへうりうりと
柔らかな頬を擦りつけて来るのが
何とも愛らしくって
見飽きないものだから、

 “いかんなぁ。”

早起きしたらばジョギングに出るはず、
しっかと6時前に目覚めたのだけれど。
もう部屋の中も
すっかりと明るい時間帯だというに
目覚めた位置から動けずに居る始末。

 “ライオンどころか、
  ウサギが跳ね回ってそうな
  いい天気だのになぁ。”

よほどにうららかなお日和なのだろう、
どこかの梢でさえずる
鳥の声までするというに、
なかなか床から離れられない、
ジャパニーズビジネスマンのご亭主、
奥方にはナイショの、
至福のひとときなのでありました。





   〜Fine〜  14.2.01.





インフルで引っ繰り返っておりましたため、
ゾロさんの“愛妻の日リベンジ”は
書けませんでしたので、
せめてその翌朝の
何となく和んでいるところをチラリとvv





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