■大川の向こう 2

□明日の元気vv
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年々、その酷暑ぶりが
間違いなく増している夏だというに、
その炎天下にて開催される
“若人の祭典”が日本では数知れず健在で。
小学生・中学生のサッカー大会に、
高校生の総体こと“インターハイ”。
他にもいろいろと全国大会が控えてようし、
博多よさこいも真夏の祭典。
そして、忘れちゃいけませんのが、
甲子園で開催の、
全国高校野球選手権大会で。

 「夏休みだからってのが
  見え見えだけどもな。」

 「さすがに、
  少しずつ工夫はされてるらしいぞ。」

そうそう。
例えば、
エースピッチャーが
一人で全試合を投げさせぬよう、
交替要員枠を増やしたそうですし、
準決勝前に調整のための休養日が入って
苛酷なスケジュールを
和らげたそうですしね。

 「その高校野球といやぁ。」

何を思い出したか、
言い出しながら
くくっと笑った社長だったのへ、

 「ルフィでしょう?」

 「ああ。
  今は野球選手になる
  モードだっていうアレか。」

赤髪のシャンクスさんが経営する、
大川を足場にした
回船搬送会社の事務所にて。
社員たちが集まっての打ち合わせが脱線し、
いつものよもやま話へ突入していたのだが。
社員みんなのマスコットボーイでもある
小さなガキ大将の日常は、
わざわざ社長が
親ばか丸だしに持ち出さなくとも、
どこからなんだか聞き付けてのこと、
おはようからおやすみまでのあれこれ、
あっと言う間に
全員へ広まっているのが
デフォルトだったりし。

 「ソチ五輪のときは
  スノボやるって言い出したし。」

 「そうそう。」

 「ブラジルW杯のときは
  サッカー選手になりたい、
  だったよな。」

 「世界柔道ンときは、
  黒帯取るぞ、だしな。」

大相撲の場所ンときくらいじゃね?
そういうの言い出さねぇのって、と。
角界関係の方に思い切り失礼ながら、
まああの小さいのじゃあ、
それは無理だろうと
そういう方向で納得してから、

 「あのくらいは
  将来(さき)が一杯あって
  大変だよなぁ。」

可笑しいのと
可愛いなぁという愛しさを
半分ずつ交ぜたよに、
何とも言えない甘い顔になった
うら若き父上が、
自慢の可愛い坊ちゃんへ、
そんな親ばかな感慨を洩れしたものの、

 「そうでもないのもいるけどな。」

船から外したらしき装備だろう、
鈍く光る金属部分の多い、
重々しそうなそれ、
油で汚れた古ぞうきんで磨きつつ、
ヤソップさんが苦笑をし、

 「おお、そうだよな。」

 「でもよ、
  ルフィに引っ張り回されては
  同じことやっとらんか、あいつ。」

お目付役というわけでもないのだが、
坊やから気に入られ、
しかも結構なんでもこなす、
運動神経のいい
小さいお兄さんを
思い浮かべた大人の皆様。

 器用貧乏にならにゃあいいけどな。

 なんの、
 剣道が本道なのは
 揺るがないだろうから、
 そこは心配要るまいよ、とか。

大人たちから
勝手な勘繰りを
されているとも知らないで、
小さなガキ大将の
太刀持ちもどきに
引き回されてるお兄さん、
そのうち、
数多の野球有名校から
引き合いが来かねないほど、
それは鋭いコントロールのボールが
自在に投げられるように
なりつつあるらしいです。




     〜Fine〜  14.08.21.







何せ寡黙な剣豪なので
周囲も気づかぬうち、
とんでもない
奥の手だらけになってると
楽しいですね。(おいおい)




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