床の間コーナーvv

□年末大予想!
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arya 様から頂きましたvv
ルフィ親分捕物帖での
いつまでも焦れったい二人に
というお話ですvv



 年の瀬が近付くに従って、リーズナブルな値段で定食などを提供している一膳飯屋「かざぐるま」は、出前やらが格段に増え、さすがに板前サンジだけでは捌き切れず、普段はぼてふりで夜泣きソバの屋台を出しているドルトンさんにも、お手伝いを頼む程に忙しく。相変わらずお店は忙しかったが、この頃になるとぼちぼち故郷に帰る者も出始めて、忙しさの一番の山場は越したであろうかと。先日ようやく「かざぐるま」でのお手伝いが終わり、今日はそれまでのバイト代を店主に渡しに来たついでに、自分もつかの間の骨休み。思っていたよりも売上が良かったのか、女将のナミさんは、ちょっとばかり色をつけてくれたらしい。勿論それは普段から骨身を削って働いているサンジさんにも、労いの言葉と共に「金一封」が出たのであるが。たまたま通りかかった下っぴきのウソップと、診療帰りのチョッパーを呼び止めて、今日は俺が持ってやるからと、ちょっとした宴会と相成ってる次第。
 殆ど毎日働いて、遊ぶ間もない板前さん。店でお客が飲むのを見ていたり、多少付き合ったりはするが――仕事中はあくまで仕事中。仕事以外で日頃から皆と賑やかに酒を飲む機会など、多々ある訳でもなく。

 …やはりこんな時くらいは、仕事は忘れて楽しく飲みたいものである。


「……今日は
 親分とは
 一緒じゃねぇのかよ?」

「今日は俺は非番なんだよ。」

 ホントは年末だし、休みなんて大概なくなるんだけど、たまにはゆっくり休めって、親分が言ってくれてよ。

「向こうも
 年末年始で忙しいから
 時間はちょっとだけだけどよ、
 しろっぷ堂のカヤちゃんに
 会って来たんだ。」

 この下っぴきさん、サンジの盃に酒が切れたと見て取るや、お銚子のの酒を注ぎ、お銚子の酒がなくなれば、店主に追加を頼む気のつきよう。勿論、チョッパー先生の様子もしっかり見ていて、酒を飲み過ぎる事がないように、食べやすそうなつまみなどを注文してやる甲斐甲斐しさ。

「……逢い引きたぁ、
 隅に置けないねぇ。」

 …なんて言いつつも、逢い引きでサンジが何やら思い出したのか、脳裏を掠めたのが、先程の親分さん。今年も色々ありましたが――その中でも板前さん、ちぃーっとばかり(いやかなり?)気になるのは、親分さんと、あのいけ好かないらしく雲水姿の坊さんであるらしく。

「…逢い引きと言やあ、
 親分とあのクソ毬藻の坊さんは
 会ってんのかね?」

 ウソップ、もぐもぐと出されたあたりめをしゃぶりながら、 

「最近は
 猫の手も借りたいくらい
 忙しいと来てるんで、
 会う機会なんかねぇはずだぜ。
 ――っても、
 こないだ抜け荷の現場で
 偶然あの坊さんに会ったとかで、
 親分、数日間は
 嬉しそうにしてたっけな…」

「それ俺も見たぞ!
 ルフィ、嬉しそうに
 町中スキップしてたぞ!」

 足に羽がついてるみたいだった!と、それまでは黙々と揚げ出し豆腐にパクついていた、トナカイ先生の発言も勢い良ければ。いやそりゃあ既にスキップじゃなくて飛んでんだろ!と、すかさずツッコミを入れ。

「ストーカーかい、ヤツは…」

 途端に苦虫噛み潰したような顔になる板前さん。燗をつけたりつまみを作ったりと手は止めないまま、神妙な面持ちでドルトンさんが聞いておりますが――三人共に気付かぬ様子。

「…来年はどうなるんかなァ…」
「何が?サンジの恋愛運か?」
「それとも来年の景気か?」
「違うよバカ。
 …それも気にはなるがな、
 親分とあのクソ坊主のことだよ」
「うーん…でも初めて出会ってから、
 もう結構時間経ってんだろ?
 来年にはさすがに
 くっついているんじゃないか?」

 親分だけじゃない、あの坊さんの方だって、脈ありと言うか親分のことは少なからず悪くは思ってないみたいだし――と、熱々おでんの玉子に食いつきながらウソップが言えば。

「…自覚してれば、な。」

 板前氏、更にぐいっと酒を煽り、

「どっちか片方でも
 自覚してりゃあ、
 焦れて何かしら
 進展するもんなのに…
 どっちも
 自覚してねぇと来てるから、
 始末に終えねぇんだよ。」

 坊さんに至っては、親分と自分がちょっとでも仲良くしているもんなら、不機嫌な嫉妬のオーラがすかさず流れて来るくせに。それでも自分が親分に恋をしているなどとは、気付きもしないのだ。

「鈍い親分はともかく、
 あの坊さんも
 気付いてないなんてな、
 ラブコメ通り越して
 ギャグだよギャグ!」

 さもおかしそうに、バンバンと台を勢い良く何度も叩いては笑ってる。笑い転げているサンジは気が付かなかったのだが…この屋台に近付く人影を認めるなり、他の2人はにわかに慌てふためいた。

「…お、おい、
 サンジ……!」

「そ…そのくらいに
 しといた方が……。」

 ウソップとチョッパーがそれに気付いて、慌てて止めに入るのだが――酒もかなり入っているせいもあって、板前によるお坊様にとって最低最悪の来年予想は止まらない。

「――いや!
 俺には見える!
 来年もヤツは
 親分に手を出すどころか、
 懸想してる自分の気持ちにも
 気付かねぇ。
 焦れったい展開になること
 間違いなしだ!!」

 どーん!!
 言い切ったぞ、板前!

 …辺りが一瞬、水を打ったようにしーんと静まり返る。燗をつけるお湯の沸き立つ音も、ぐつぐつおいしそうに煮え立っている、おでんの鍋の音すら消え去った。

 そして。
 ゴゴゴゴゴ…と
 不動明王の如き怒気篭もる
 オーラの、
 お坊様がすぐそこに!

 「「――ぎゃあああああ!!」」

 恐怖におののいたウソップとチョッパーは思わず叫び、互いに抱き合って、ガタガタと震えている。(ちなみに諸悪の根源?である板前と言えば、動じることもなく、少し眉を上げて坊さんを見据えただけだった。)



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