■蒼夏の螺旋 3

□さりげに勝負? 後日談
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巷では暖冬だったあおりで今年の花粉は手ごわいかも とかいう
困ったものの話を叩き落としたいか、
サクラの開花はいつごろだろかなんて、
待ち遠しいものへの話題もそろそろ囁かれているけれど。

 「三月と言えば “ホワイトデー”だろう?」

日本ではひな祭りの次に、
3月の行事…というか、最近発祥のイベントとして“ホワイトデー”というのがあったりする。
2月の“聖バレンタインデー”に対するアンサーデイのようなもの、
贈られた側の男性が“チョコレートありがとうね”とお返しをする日というもので、
始まりはこれまた日本の菓子店が思いついたもの。
そこの商品だったマシュマロをお返しにということで始まり、当初は“マシュマロデー”という名称だった。
お忙しい男性がそんなものにいちいち気を回すはずもなく、全く知られないまま埋もれかかってたそれを、
全国飴業界みたいなところが乗っかって、イマドキほどの知名度になったらしい。

そしてイマドキはその“お返し”にも意味があるなんて都市伝説がいつの間にか出来上がっており、
それによると何とマシュマロはあんまりいい意味じゃないらしい。
後から乗っかった飴屋の陰謀か、
それとも ちょっとほどその始まりを知ってるぞという鼻高々男の足元を掬いたいのか、
マシュマロなんてパサパサしていて美味しくないから
“興味ない、一緒にいたくない”という意味だなんて言われているとか。
スモアの美味しさを知らんのか、世の小雀どもよ。(おっと、失礼。)
で、じゃあ何が最適かとなると“キャンデイ”と来るのが
いっそ判りやすいというか あからさまなんだけれど、
(硬いとか長続きするとかいうのが理由らしいが、私なんて飴はガリガリ噛み砕くけどな?)
何と味にも意味があるらしく、
イチゴだと子孫繁栄というのが笑える。(おせち料理かいな♪)
ブドウが酔いしれるよな恋愛で、(ワイン?)
オレンジは幸せな結婚。(欧州では結婚を象徴する花とされている)
リンゴは運命の相手で、レモンは真実の愛。
…そこまで考えてないって、世の男性諸氏は。
というか、
うっかり14日に のど飴あげて告白だと盛り上がられたら大変だ、気をつけてねという警鐘か?

ちなみにクッキーが一番無難で“友達”という意、マカロンは特別な人という意味、
キャラメルだと安心する人、バームクーヘンだと長続きする関係でいたいのだそうで。
確かに、結婚式の引き出物だもんな。(そういう意味で渡すのだしねぇ)
これって飲み会とかお茶会で
“こうなんじゃない、そうそうきっとそうだよ”と
女性が勝手に盛り上がった話をまとめただけなんだろうな。

  もーりんのちょっと聞いてよ四方山話は ともかくとして

うるう年でない限り、2月と3月は28日までぴったりと同じカレンダーなので、
残念だなぁ当日は会社休みだわなんてことにはならないところも よく出来ており。

 「クッキーを焼こうかなって思ったんだけどさ。」

何であんな不愛想男がモテるのか、
某商社の中堅支社を支える営業担当、
この歳とキャリアでは破格かもしれない長付きの
ロロノア=ゾロ氏へと先月の例の日に沢山チョコレイトが集まったので、
ホワイトデーのお返しを考えていた幼な妻のルフィさん、
時々自分のおやつ用にとお菓子も作らないでないその腕を振るおうかと考えた。
お隣の小野寺さんチの奥様とか、
PC教室の生徒でシェルティのチョビくんのお散歩も時々一緒する
風間くんチのお母さんとかに相談したところ、
ステンドグラスクッキーって可愛いよとか、
アイスボックスクッキーってお店で売ってるのみたいでお洒落だとか、
サブレってそう難しくないらしいですよとか、
色んな情報や簡単レシピを下さった。
それでとお試しにオーブンでの1トレイ分ほどを焼いてみて、
贈る側となる亭主殿に味見してもらったところ、それは美味いと称賛されたが、

「でも、これをお姉さんたちへ送るのにすんのはダメだって言われた。」

やっぱ不味い出来だったのか?って訊いたらそうじゃないけどダメなんだってと、
理解できないというふくれっ面をする童顔を、
回線の向こうにいる存在なのがもどかしいなと思いつつ、

「そりゃあ あれじゃない? 単純な焼きもちだから怒ってやりなさんな。」

ナミさんがくつくつと楽しそうに笑って応じる。
自分と夫との途轍もない歳月かけた
波乱万丈なお鬼ごっこへの終止符を打ってくれた、ある意味、恩人にあたろう少年で、
一見するとまだ十代そこそこだが、実はもう20代半ばだというややこしさ。
それは無邪気な風貌ながら、そちらもそりゃあ切ない恋をしていたのを胸に秘めてた彼なので、
ナミは勿論、お兄さん代わりだったサンジも、それはもう心を砕いての交流を続けており、

 「ルフィの手作りクッキーだなんて、
  サンジくんにも内緒で送ってきてほしいほどだわvv」
 「えー? そんな恥ずかしいこと出来ないよぉ。」

経営コンサルタントにして 財界を暗躍しもするエージェントのサンジェスト殿は、
何処に店を出しても三ツ星が取れよう凄腕シェフでもあり。
それをようよう知っているルフィにすれば、揶揄われていると思ったらしいが、
こんなこと話してねと奥方から聴いたサンジェスト氏が
冗談抜きに特別注文してくるのは、
チョコの交換は関係なくそりゃあ美味しいマカロンの詰め合わせを東国の愛し子へ贈った
ホワイトデーも過ぎたころのことだった。




  〜Fine〜  19.03.15.





 *枕の蘊蓄部分は別のお部屋で調べたことを使い回しました、
  此処まで掘り下げられてるなんて知らなんだなぁ。
  贈ってくれる殿方はそこまで考えて無かろうに、
  勝手に憶測振り回してんじゃないよと思ったり、
  既婚者が義理チョコもらった場合、お返し買うのは奥さんだろから、
  人気のイケメンを射止めた奥方への嫌がらせで、
  こぉんなことも知らないの?なんて話してたのが広がっちゃったのかも?
  こんなお説があるなんて、確かに女って面倒臭いわって思っちゃった。





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