■蒼夏の螺旋 3

□届くといいな
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打って変わって 今日は朝から雲も大急ぎで撤退しての、
パキーッと音がしそうな日差しも力強い いいお天気で。
そんな明るい日の差し込むフラット内では、
日頃もだらだらしちゃあいないものが、今日はまた早回しの動画のように
家の中を小走り、ともすりゃあ跳ねまわるノリであっちこっちへ駆け回り、
洗濯じゃ掃除じゃと忙しそうにしている小さな奥方だったりし。
シーツや夏物の敷きパットやをかごに攫って洗濯機へ突進しつつ、
リビングで食後の新聞タイムに勤しむ亭主殿へと声を掛ける律義さよ。

 「ゾロは遅出なのか? どっか見舞いに回るとことかあんのか?」

さすがは営業系企画部係長の嫁で、
得意先とか取引先への挨拶だの心配りだのにも多少は通じているものか、
遠出の挨拶回りがあるんじゃね?と先に訊いて来るところはなかなかの進歩。
というのも、

 「中原のじっちゃま、ほんのこないだ信玄餅送ってくれたばっかなんだ。
  お礼かたがた何か困ってないか聞いた方がいいかなぁ?」

停電してるとか水道止まったとか困ってないかなぁ。
まだまだ昨日の今日みたいなもんだから、却ってお邪魔かなぁと、
自分こそ困っておりますと言いたげに、ドングリ目の上で眉を寄せてしまうので。
ご亭主としてはそっちの方が案じられたか、
馬鹿だなぁと無神経にも笑い飛ばしたりなぞせず、

 「そうだな。
  今は外からやいのやいの言っても、ただ振り回すことになるかもしれんな。」

勿論、言われてから動くような暢気はやんねぇがと、頼もしく笑ってやれば、
うんうんと何度も何度も懸命に頷いて見せる。
秋の連休もさして関係のない勤務だし、来週に迫った国家的慶事にはかかわらぬ系。
冬の企画各種の詰めに入っていたらば、昨年に負けず劣らずで災害が次々やって来たのに翻弄されて、
それらが一応明けたのが昨日……という、今→ここに居る按配。
首都圏や都内にとどまらないお付き合いの輪をもつご亭主だし、
始まりこそ商談に手結ばれたそれとはいえ、
家族ぐるみのお付き合い、ルフィ奥様も個人的に仲の良い人がたんとおり、
出来ることがあるのなら何でも手伝いたい、何なら飛んでゆきたいお元気な身を持て余し、

 せめて勤勉でいよう、天からのお仕置き、一つでも減らそうと、

そうでおれば、大人も手が空いてお手伝いにいけようよと、
PC教室の室長せんせえが子供らに向かって言ってたと。
だから自分もそれを頑張ってると、子供みたいに ふんすと鼻息も荒く言ってのけた奥方の、
非情な世のありようも結構知ってるはずなのに、
無垢なところにじわり来ている旦那様は、はっきり言ってむっつりです。


  卒爾ながら、被災地の皆様には 忙中お見舞い申し上げます
  一日も早く元通りの生活に戻られますよう お祈り申し上げます。



  〜Fine〜  19.10.15.





 *こんな時だというに、何もできない身が歯がゆくて、
  ついつい要らんことしております、すいません。
  息抜きに覗いてくださった方、少しでも肩の力が抜ければと思います。

  毎年毎年、随分な規模の地震と台風がやって来ますね。
  昨年、やっぱり地震と豪雨と台風が立て続いたので
  これが令和初年度への前払いになってくれまいかななんて思ったんですが、
  そうはいかないみたいで。
  台風19号、来る前から只者じゃあないことが取り沙汰されていましたが、
  有名な大きい川が次々氾濫するほど大変な被害が出ているそうですね。
  被災された皆様、お見舞い申し上げます。
  何の手助けも出来ない身が恨めしく、
  文中でのルフィさんじゃないですが、
  せめて天罰が降らぬよう勤勉でいようと日々のささやかな家事への奮闘に精を出してます。






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