■蒼夏の螺旋 3

□笑顔の単位
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  *コロナ禍には触れないお話ですのでご了承くださいませ。


昨日まで寒かったのがいきなり真夏日気温になったり、
そうかと思えば、慌てて出してきた日傘では役に立たない豪雨が続いたりと、
このところの日本のお天気は相変わらずに目まぐるしい。

 「天気がいいうちにってコートやトレーナーやまとめ洗いして春物だしたけど、
  あんまり着ないうちにこの暑さだもんなぁ。」

ゴールデンウィークまで限度を知らずにどんどん気温が上がるのは恒例だけれど、
その後の衣替えを嘲笑うかのように、
梅雨寒がやってきて結局は長袖の羽織るものが必要になるのもまた恒例だったはずが。
今年は冗談抜きに薄物の長袖はあまり出番がなかったまま、
下手すると梅雨もあっさりと明けるんじゃないかという流れのようで。
微妙に寒い日も戻ってきた春先、
いつまでもジャケットを仕舞えなかったのへじりじりし、
気温が上がったのでそれッと箪笥の中身を入れ替えたというロロノアさんちの小さな奥方。
塩ビのチューブに詰められたコーヒーチョコのシャーベットをシャリシャリ堪能しているお顔も愛らしくて、
そんな所帯臭いことを言うのがぱっと見は全く似合わない幼さだが、
お惣菜の相談からフリマアプリなどネット系の指南などなど、
ママ友ネットワークを3つほど掛け持つ、なかなかに頼もしい“奥様”でもあって。

 「元はといやぁ PC教室の父母会連絡網だったんだろうに。」
 「まぁなvv」

ご近所の子供たちのサッカーチームのコーチをやってたはずが、
いつの間にスカウトされたやらで
マンションの中の商業スペースのキッズ向けPC教室の講師を始めており。
その流れでの連絡網に関わって以降、
気が付いたらここいら近辺、下手したら引っ越した先からも相談や連絡をしてくるお母さんたちとの
途切れないままな交流の輪が結構な大きさになっているらしく。
生活の知恵とかちょっとした悩み事相談まで、
あっけらかんとした口調ながらも上手に転がす若せんせえの気負わないところがいいと、
時々はお茶会なんぞにも招かれているほどなのだとか。

 「けど、知ってるお母さん方とのじゃないと受け付けてねぇから。」

女性ばかりの場はさすがに気まずいと思うのかと思や、

 「…不倫とか疑われるの ヤじゃん。/////」

赤くなったのは、不特定多数から噂されるのが、ではなく、
頼もしい伴侶殿から、というのが嫌だと言いたいらしい。

 『……なぁんて惚気ちゃうんですもの、相変わらず新婚さんなままなんですねぇ。』

というのは、小野寺さんちの奥さんからのご報告で、
不倫どころかゾロさんへの何かしらで“どうしよう”って困ってたりするのがほっとけない。
何ならご亭主でも無体は許さんとする親衛隊とか持ち上がりそうなほどですようと言われてもいて。
ちなみに、不倫うんぬん発言をご当人へ確認したら、こちらには言うつもりはなかったか、
真っ赤になったままリビングのクッションを掴む端から総投擲という
それは可愛らしいむくれ方をしてくれた伴侶さんではあったれど。
機嫌を直せとアイスを提供し、
2本1パックのを並んでシャリシャリと堪能してから買い物に出ようと持ち掛ければ、
今年のと買ったばかりのカンカン帽を頭に乗っけて付いてきて。

 「そうそう。
  風間くんがサ、物凄く使いやすいツールアプリを組み立ててて。」

機嫌が直ったか、自慢げにお友達の話など持ち出してくる。
やや荒くたい風貌の頼もしい旦那様、
他愛ないと思ったが、その実、無駄に分厚い胸板の下で随分とホッとしたのも事実だったりする。

 “だってこいつは……。”

買い物に出ようとチラシをバサバサ振り回す屈託のなさだけを観ていると、
あとで切なくも手痛い想いをすることになるから、そこのところは重々心していなくてはならぬ。
見た目は十代のお子様だが そこには口外できない事情があるのだし、
そこのところをうっかりと失念していて、
実は臆病なところも持ち合わす幼馴染を泣かすところだったことも何度かあって。

 「あ、ほらタチアオイ咲いてる。」

駐車場に接した道路脇、
フェンスの中に緑をぐんぐんと伸ばしている緑を差してそうと言い出し、

 「企画部なんなら季節の花の名前とかも知っといた方がいいぞ?
  パンフ作るときとかに参考に出来っだろ?」

時々とんでもない取り合わせの花とか緑を平気で載せてるタウン誌とかあるけど、
ここいらでは自分で丹精してる人も多いから、
そういうのって笑われてるんだぞ?なんて一端なことを言う。
ただの口だけじゃあない知識である証拠に、

 「タチアオイは根元から順番に花がついて咲くんだけどな、
  天辺の先っちょのが咲いたら梅雨が明けるんだって。」

そういうマメ知識もちゃんと押さえており、
草花のこういう話が出鱈目だった試しは今のところはない。
梅雨云々という話題だが、実をいうとこういう話は
此奴がしばらくほど共に居た“年寄り”からの受け売りらしく。
日本には寄り付かなかった癖に、ルフィの故郷のことだからとよく話してくれたらしく。

 『花だの料理だの、女々しい趣味ばかりの奴めと思いたきゃあいいさ。』

ご当人も開き直ったようにそんな言いようをしたりするものの、
気が遠くなるほどの長い間をたった一人で過ごしていた奴だと聞いているし、
共に逃避行を図った相棒が少しでも寂しくならぬよう、細やかに気を回してくれていたのは明白で、
そうなのだろうと気づいてからこっち、こっそり感謝さえするところだし。

 “本人へは言うつもりもないけどな。”

ムスッとついつい口元を曲げるものの、
ああいかん大人げないと大昔の魔女の奥方のドラマよろしくムニムニと表情を修正。

 『ゾロって優しいよな、っていつもおのろけ聞かされていて引きつってるわよ。』

と、向こうの伴侶様から聞いていたりもするからで。
武骨で一度に1つことしか考えられないようなタイプで、
よく言って実直、悪く言って不器用なのに
面倒臭い自分のような子を、傷つけないようにってそりゃあ気を配ってくれていて。

 『誕生日とか近くなってサンジがサンジがって連呼するとさ、
  嬉しいことにやきもち焼いてくれつつも、
  こめかみ引きつらせては、いかんいかんってプチ瞑想してるしって。(笑)』

わあ、しっかりバレてるよと思ったのと同時、
そうやってあちこちで聞いて聞いてとカワイイ自爆しているようだが、
それもまた、今時には得難い性格だと思うし、

 「何だよ、口許にやけてんぞ?」

強がっているような語調で言いつつも
何か失敗したのかな、口の周りにアイスついてた?と、
手の甲でごしごしし出す可愛いところへ、

 “いかんいかん。”

こっちも気を引き締めてるつもりなんだがな、駄々洩れらしいと反省しつつ、
そうなる基本単位が奥方の無邪気さなので、
ハードル低すぎてか、その言動へいちいち発動しまくってる今日この頃。
武道の精神修養しといてよかったなぁと、
何だか順不同なことまで思っております、元剣道全国チャンプ殿。
まだ暦は初夏ですが、夏と言っても通りそうな熱々でございます。(笑)


  〜Fine〜  20.06.23.





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   いちもんじさん『ものさし』

 *チロルチョコ何個分という換算は私もやってましたし
  お懐かしいFDの容量の何倍GBなのぉというのも身に染みたものです。
  (今時のお嬢さんたちは知らないでしょうね。
   昔はMDみたいなフロッピーディスクが記憶媒体だったのですよ。
   これがまた静電気に弱くて弱くて…。) MDも知らないかも…
  そういう単位的なネタのお話をとのことでしたが、ちょっと思いつかなくて、
  お待たせするのも何だと大急ぎでこんなん書いてみましたが、そのうち再挑戦させてくださいませ。






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