■天上の海・掌中の星 4

□また来年
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挨拶代わりに片手を挙げた、
金髪痩躯の天界関係者。
ゾロとは邪妖封滅に於ける
タッグを組んでいる聖封様ではあるが、

 「言っとくが、
  仲人は御免こうむるからな。」

 「あ、聞いてたな。」

人影がなかったから
ああいう話も
出来たんだってばと言いたいか、
一応は良識あるよな主張をするところが、
ちょっとはお兄さんになって来た
ルフィさんかも知れないものの、

 「でも、そっか…仲人さえ立てられりゃあ、
  宣誓くらいは出来るよな。」

やだ具体的な話が見えて来たじゃないのと、
ふわふかな頬を
自分の両手で押さえ込む坊ちゃんなのへ、

 「だから、そんな義理はないし、
  何が哀しゅうて
  男同士の立ち会い人にならにゃならん。」

 「つか、余計なことを吹き込むな。
  そこの色事師。」

 誰が色事師だ、誰が。

 四六時中女のことしか考えてない、
 そこのグル眉毛のことだよ、と

なかなか会話がエキサイトして来た
イケメン揃いの男衆。
誰に聞かれているか判らんから、
とっとと目的地へ向かいたまえ。

 「つか、
  今日はいよいよの
  年越しの買い溜めだよな。」

最近では、
コンビニやチェーンスーパーなんぞが
“元旦から営業”しているのが
当たり前という風潮になりつつあるが、
実はあれって、
相当な企業力がないと
出来ない所業なのですよ、御存知か?
というのも、流通の要にあたる“市場”が、
元旦から3が日にかけては
お休みになるからで、
よって、お正月(とお盆)は、
その日に採れた新鮮な野菜やお魚を
小売店が仕入れることは出来ません。
なので、以前は
“3が日は休業致します”なんてな
張り紙が張られている
商店街の風景というのが
お正月の風物詩でもあったのだが。
自社工場だの自社農場だのをお持ちの
巨大チェーンスーパーなんぞは
そういう事情も関係ないし、
お魚に至っては、
自社倉庫(冷凍設備完備)で
大量に保存してらっしゃるので、
やっぱり以下同文と来て。
余裕で365日 通常営業をこなせてしまうので、
年末だから、お正月明けの分も
食材を買っておこうという準備は
年々要らなくなりつつあるようですが。

 「ちょっとしたスーパーなら、
  エリアマネージャーが
  ドン引きするほども買い占めてやるぜ。」

 「おう、品定めは任せときな。
  しょむない品しか置いてねぇ店は
  責任者呼んで片っ端から
  パシリにしてやんぜ。」

こらこら、そこの大人げない大おとな二人。
妙なところで何でまた、
そうまで息が合ってますかね。

 「何をワケ判らん
  茶目っ気だしてるかな、
  二人がかりで。」

ルフィさんまで
怪訝そうな顔になっておりますが、
実をいや、ルフィが知らないところで
とある因縁があったようで。

 “あんのサブチーフとかいう青二才がよ、
  売り出し品ですので、
  若鷄もも肉は
  お一人様2パックまでだとぉ?”

 “別に安いから
  買いてぇって
  行ったんじゃねぇってんだよ、ああ"?”

ほんの数日前という、
クリスマスの買い出しにての一幕らしく、
あいにくとルフィは
同座しなかったので
顛末をまるきり知らない出来事。
食べ盛りさんを抱えておいでの、
毎回大量に買っていただいてる
お得意さんだと知っていた店長が
どひゃあっと慌てて飛んで来たものの、
決まりは決まりと譲らなかった
精肉コーナーのサブチーフ殿に、
恨み骨髄でおいでの天界人のお二人らしく。

 「二度と買い物に行けねぇ
  騒ぎだけは勘弁だからな、二人とも。」

おおお、
ルフィさんが他の誰かへ
こんな言いようをするのを
聞ける日が来ようとは。(大笑)
ややもすると目許を眇めているらしいのだが、
大きなドングリ目では
それもなかなか難しいらしく。

 「ともかく、買い物は任したから。」

 「お? 何だなんだ、
  あれ買えこれ喰いたいは
  今回はなしか?」

天界の辣腕コックと、
修行中ながら
ルフィさんの好みをよく知るシェフとが
今回同様、
堂々の揃い踏みをしているという場面であれ、
総菜のコーナーに近づくと、ついつい
揚げたてのコロッケだの
メンチカツだのが
喰いたいとおねだりしだすわ、
新発売らしきスナック菓子を見つけると
味見をしたいと言い出すわ、
小学生かというような
他愛ないレベルの我儘を並べるのが常なのに。
売り場にさえ向かわぬと
言い出すなんて珍しいと、
グル眉のシェフ殿が小首を傾げるが、

 「俺には俺の大役があるんだ、うん。」

鼻息荒く、うんうんと頷いて、
スカジャンのポッケから
その手に取り出したのが、
商店街主催の福引券数枚、だったりし。

 「どうしても欲しい景品があっからな。
  それを引き当ててくっから、
  買い物のほうはよろしくってことだ♪」

今からワクワクが止まらないものか、
にっぱりという満面の笑みにて、
目許を細めの口許ほころばせのする
坊ちゃんなのへ、

 「欲しい景品?」

確か、父上の名義の
口座カードを自由に使える身で、
無茶はしないがそれでも、
欲しいものなら大概は
手に入る子じゃあなかったっけと。
そこまで通じている聖封さんが
キョトンとしたが、

 「内緒だ、さらば。」

意味深に“ふっふっふっ”と笑いつつ、
まずはと見えて来たアーケードへ
駆けてくルフィさんが、
どれほどのこと、
くじ運に恵まれているかもまた有名で。

 『だからさ、今年の特別賞が。』

その道の名人が彫ったという、
百万円は下らない
臼と杵のセットだったそうで。
それを当てて、
盛大な餅つき大会を
目指しておいでのルフィさんだったようで。

 『何なら天界でもやろうか♪』

天界へ持ち込めるんだろうか、
いやまあ そこは、
意志のない物質だから
何とかなるんじゃね?と。
そっちの方が盛り上がっちゃったのは
のちのお話。
ビールや コシヒカリ10キロも当てたが、
一番の目的、
見事落とした運のよさは
健在だったかどうかは、
年が明けてからのお楽しみということで。


  今年もお世話になりました。
  皆様がよい年を
  お迎えになられますように。




     〜Fine〜  13.12.30.





春も夏も秋変でしたが、
冬も何だか妙な始まりようですね。
新年のご挨拶は諸事情から出来ませんが、
来年もまた、
遊びに来ていただけたら嬉しいですvv
それでは、またねvv



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