■天上の海・掌中の星 4

□我が名は 天狼の護神ゆえ
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実はこの場所、
ゾロが 居候しつつ
ルフィの護衛を続けている住宅街の上空で。
発見された地点から、
亜空経由で送り込まれて来たという時点で、
こやつが尋常ではない存在であり、
早急に封印、若しくは封滅せよとの
指示が飛んで来たも同然な仕儀という運び。
まずはと、異空間を仕切る
“合(ごう)”の障壁は張ったれど、
先程から発揮されているのが、
どこまで恣意に拠るものかも不明な、
そりゃあ果敢な暴れっぷりなため。
ゾロの手により封殺した弾みで、
万が一にも四方八方へ
危険な破砕片が飛び散らないよう、
もちっと強靭な結界障壁を
張り直していたのだが。
念を込めるという集中を
邪魔し倒してくれる厄介な相手が、
お気に入りのスーツを傷物にしたとあって、
サンジさんが無駄に逆上してしまい、
以下 同上…というワケだったのであり。

 「よしっ、
  これで分散しても
  一気に収集してやんぞ。」

空中のそこかしこへ
特別仕立ての宝珠を布陣し、
彼が咒を詠唱することで
自在に空間を収縮できるらしく。
周到な下準備OKという
GOサインを得たその途端、

 「…よしっ。」

待ちくたびれたぜとの不敵な笑みも、
それはそれは
男臭い頼もしさに満ちた雄々しさ。
両手にしっかと握り直した大太刀を、
何度かぶんぶんっと大きく振り、
逞しい双腕へ柔軟性を持たせるよう
ほぐし切ると。
空中に浮かんで
ゆらゆらたゆとうアメーバくらげへ、
腰を落として身構えたのも一瞬。
そういう態勢を取ったと
見回す視線さえ置き去りにする俊敏さで、
重厚な肢体を、
されど旋風のような素早さで飛翔させ。
戦意という覇気を十分にまとわせた刃にて、
厄介な槍もどきが飛び出して来る寸前、
本体を真っ二つに刻んだ太刀筋は、
なかなかに確かなそれだった


  …………はずだったのだが。


確かに太刀が切り裂いた、
その手ごたえもありはした。
真ん中よりやや上辺り、
ゾロが体当たりしたかのように
接近して切り裂いた部位が、
ぶるりと揺れて
そのまま切り離されかかったが、

 「…もしかしてこいつ、水なのか?」

何なら炎だって切り裂くぞという、
闘気を厚くまとわせていた
切っ先だったというに。
切り裂いたはずの部分が、
すうと内側へ吸い込まれ、
何事もなかったかのように、
再び ふあふあと
浮遊し続ける敵さんだとあって。

 「てめ…っ!」

人を舐めくさるのもたいがいにしろよっと、
今度はゾロの方が
さっきまでのサンジのような
怒髪天状態になってしまったから判りやすい。

 「水性だろうが油性だろうが、
  だったら蒸散しとる覇気が
  通り抜けたんだぞ。」

 「だが、ぴんしゃんしとるしなぁ。」

何だったら凍らせてみようかと、
サンジがぱちりと指を鳴らしたが、
その輪郭がうっすらと凍りかかったところで、

 「うおっ!」
 「わあっ!」

さっきからの鋭槍化と
間合いが重なったようであり、
まとわりかかった薄氷を突き飛ばしがてらに、何本もの尖端が飛んで来て、
うっかり忘れかかってた二人が、
なりふり構わぬ大仰な避け方をしたところで、


  見ちゃあいられんな。




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