【リクエスト集】

□おもひで空
1ページ/7ページ

ぽっかりと温かい日差しに当たりながら宮殿内にある庭の池で釣りを楽しむ井宿と、
彼がいつになったら魚を釣るんだろうと待ちわびている彩華の二人がほのぼのと過ごすある午後の日。
至って今日も平和の筈だが、何処からともなくドタバタと駆け走る音が聞こえてきたと思えば、何やら翼宿の騒ぐ声が響いた。

「ぎゃー!もう来んなや!煙いわ!助けてぇー!」

翼宿の助けを呼ぶ声に何事かと井宿と彩華が
釣り糸から目を離し、自分らの元にやって来る翼宿を見やる。

「だぁ、騒がしいのだぁ。一体どうしたのだ、翼宿?」

「そうよ、魚逃げちゃうじゃない」

「端っからおらへんやろ!魚っ!」

「え?居ないの……?」

じろりと彩華は、「どうすんのよ?今夜の晩ご飯」と、井宿を見やると
「肉料理でいいのだ?」そう言いながら井宿は困った笑み浮かべる。

「あー、二人共……見つめ合っとらんで何とかしてくれへんか?」

翼宿の目には二人がイチャついて見えたのか、うんざり気な溜息をついた。

「ならどうしたと言うのだ?」

はいはいと言った感じで井宿が翼宿に聞くと彼は必死に説明し始めた。

「急に何や知らんけど、けったいな女が現れてやな」

「けったいな女?誰よ?」

「せやから知らんって!せやのに……あ!あいつや!」

翼宿の指を差す先を井宿と彩華が目を向けると、
「みぃーつけたぁ」と言いながら、仁王立ちで翼宿を睨みつける煙草を銜えた少女が居た。

「観念して降伏しろ!いつまでそう、逃げてしらばっくれるつもりだ?」

「せやから、ホンマ、知らんって!お前誰やっちゅーねん!?」

「あぁん?あんた、まだ言うかっ!?」

ズカズカと翼宿に歩み寄り、胸元を掴んでドス黒いオーラを放ちながら更に睨む少女。
そして、翼宿は彼女の銜えた煙草の紫煙が顔にかかり、むせる。

「ゲホゲホ!アカン!煙いわ!染みるわ!――ゲホッ!離せやぁ〜」

「いい加減に――」

「まぁ、待つのだ!暴力はいけなのだ」

井宿が翼宿の胸元を締める少女の手を掴み、翼宿の解放させた。

「おいっ!あんたからもこいつに言ってやれっつーの!」

「言うって何をなのだ?まず、君は一体誰なのだ?」

「なっ!?お、お狐……あんたまで」

「狐じゃないのだ、井宿なのだ」

井宿の言葉に唖然とする少女。そして、怒りゲージがマックスになったのか、
ワナワナと震えた拳を握りしめた。

そんな彼女にさっと冷や汗をかく翼宿と井宿。
だが、彩華は嬉しげな声を上げて彼女に飛びついた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ