【My treasures】

□キミと重なっただけ
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『ここはどこなんだ?』
「おいらにもさっぱり…」

井宿と釣りに出かけた先で、気持ちいい日差しを浴びていた井宿とつぐみ。
いつの間にか寝てしまっていたらしいが、目を開ければ見たことのないところにいた。

『たぶん私のいた世界に近いんだと思うけど、私の知らない天井だな』
「ここが…なのだ?」
[誰かいるんですか?]

カチャとドアが開いて、一人の女性が入ってきた。
その人はつぐみと井宿を見て、目を丸くした。

「柚月?なにかあった?」
[どうやらなにかの拍子で、次元が交わってしまったみたいですよ]

続いて入ってきた男性を見て、今度はつぐみと井宿が目を丸くした。



部屋を移動した4人は、リビングのソファーで柚月が入れた紅茶を飲んでいた。
柚月の話では、ここは本の外の世界。
しかし、少し次元が違っており柚月の話では、何かの拍子で次元が交わってしまったという話。
柚月も【四神天地書】に入ってしまった人で、芳准はこちらの世界に転生した井宿らしい。
時間軸はこちらのほうが早いらしい。

『どうやったら元の次元に戻れるんだろう?』
[たぶん目的を果たせば、帰れると思いますよ]
「しかし、おいらは複雑なのだ」
「俺もだな」

井宿と芳は少し居心地の悪い顔をしていた。
次元が違うとはいえ、元は同じ人間。
複雑になるのは仕方ないだろう。
そんな二人を見て、柚月もつぐみも苦笑していた。

「しかし、興味あるものばかりなのだ」
「じゃあ、少し部屋を案内しようか」

芳准は井宿を連れて、部屋を出て行った。
つぐみと柚月は、そんな二人を見て微笑んだ。

[…つぐみさん、これからきっと大変なことがあると思います]
『そうだよね…私が何ができるかわからないけどな…』
[…大丈夫です。みんなを…井宿を信じていれば]
『…ありがと』

つぐみはそういって、立ち上がると部屋の窓から空を見上げた。
そこには晴天の青空が広がっていた。

『…やっぱり、私は灰色の空にしか見えない』
[私が見ていた灰色の空は、井宿が…芳准が青空に変えてくれました]
『柚月…?』

柚月の笑顔がなぜか、ほんの少しつぐみには悲しげに見えた。
まるで何かを背負ってきたような笑顔。
その笑顔をちょうど部屋に戻ってきた井宿も、芳准も見ていた。
井宿はその笑顔が、なぜか心に残った。

「(つぐみ…彼女の笑顔がキミの笑顔と重なったのだ)」
[…どうやら帰れるみたいですよ。また会えるかわかりませんが、お元気で]
『柚月、ありがとな。元気でな』

赤い光に包まれたつぐみと井宿は、その姿を消した。

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