短編
□鬼退治珍道中
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むかしむかし、あるところに、鬼たちに苦しめられてる朱雀村がありました。
鬼たちは、毎日のように鬼ヶ島からやって来ては、村の宝や食べ物を奪っていくのです。
困り果てた村人たちを見て、村長の星宿はある娘に頼みます。
「つぐみよ、鬼ヶ島に行って鬼を退治してくれぬか」
「え、何を唐突に……しかも何で私?」
「すまない。お前のような若い娘に頼むのは私も気が引ける。
しかし頼める者はもう、つぐみしか居らぬのだ」
「どうして私しか居ないんだ?桃から生まれた男はどうした?
常日頃から『鬼退治が我が桃から生まれ、桃から受け継がれし宿命』って、中二病風に意気込んでたじゃないか」
「それがだな……」
星宿は話そうかどうかとても悩みましたが、きちんと正直に話す事にしました。
「桃太郎は……出て行ってしまった」
「もう鬼ヶ島に?まさか鬼に殺られ――」
「あ、いや……名が名だけに、電鉄を制覇すると言って村を出て行ってしまった」
「で、電鉄……制覇?なんだそれ」
「あれだ、さくま式だ」
「はあ?」
話が逸れそうになったので、村で唯一の医者である軫宿が村の現状を説明し始めました。
「それよりも実は今、村で流行り病が起こってな。三分の二の村人が倒れてしまっている。
まだ病にかかってない村人は、感染を恐れて家から一歩も出ようとしない……」
「あー、それで村中が寂れてたのか」
「流行り病に効く薬はある。しかし鬼たちがその薬も、宝と食べ物と一緒に全て盗んで行ってしまった。
それも薬の作り方を示した巻物までも……一刻も早く取り戻さねば、このままだと……」
言葉を紡ぎ、溜息をついた軫宿の表情はとても悲痛なものでした。
星宿が言います。
「そういう訳なのだ。軫宿は病で倒れた村人たちの看病で出れぬし、村長である私も村を離れる訳にはいかない。
だからどうか頼む、つぐみ。鬼たちを倒しに行ってくれぬか。礼は必ずする」
「礼!?まぢで?どんなもんでもいいのか?」
「良かろう」
星宿が承諾すると、つぐみは「よっしゃ!鬼退治してきてやる!」と言い、
鬼ヶ島へ鬼退治しに行く事になりました。