夢短編
□月明かり愛照らす
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『なんでやねん!!』
浪花の漫才師並のツッコミが響き渡った。
その声の主はとんかつと言う、朱雀七星士が一、井宿の恋人だ。
『アカン!意味判らんし、どういう事なん?何なんよ、これ?』
ツッコミを連発するとんかつが握り締めているのは一通の手紙。
怒りで震えた手のせいだろうか、手紙が小刻みに震えている。
《今宵の月はなんて綺麗なんだ。君も見ているだろうか。
あぁ、此処に、月に負けずと美しい君が寄り添ってくれてたら…
そうだ、今度、一緒に月見をしょう。この手紙を渡した次の日の夜。
二人で寄り添って月を見よう。そして、甘い囁きを共に交わそう――》
『寒いわ!ダサいわ!あほぉー!』
冒頭の『なんでやねん!!!』はどうやら、手紙のクサい内容に対してらしいが、
とんかつの燃え上がる怒りの理由はこの手紙を発見した場所が井宿の部屋だと言う事。
『嘘やろ……井宿が浮気なんて……』
ずっと、互いに一途な想いを通してきた筈なのに。
こんな手紙を送る相手を作っていたとは……。
ショックで堪らないとんかつ。
問い詰めるべきか見過ごすべきか……。
あれやこれやと考えていると、部屋の扉が静かに開いた。
「だっ、とんかつ?オイラの部屋でどうしたのだ?」
勿論、部屋に入ってきたのは部屋主の井宿だ。
『あ、いや、別に!井宿に会いたくて来たんやけど、
居なくて。せやから、その、待ってたんよ』
とんかつの言葉に嘘は無い。――が、
まさか『浮気相手への恋文を勝手に読んで待ってました!てへぇ』とは言えず、とっさにその恋文を隠した。