LONG STORY
□戌
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久しぶりの学校は疲れた。
始業式は立ちっぱなしで足が棒になるし。夏休みの宿題を提出して帰るだけかと思ったら、新学期だからと担任は席替えを始めるし…。
「理央どこ?」
「ここ」
「後ろじゃん。良いなぁ〜。私ここ」
「うわ、クーラー直撃だ」
「理央もじゃない」
私は後ろから2番目の席を引き当てた。黒板がさらに遠くなったなぁ…と目を細めていると、「隣、雨月さん?」と右隣に移動してくる小湊くん
くじの番号と黒板に書かれた番号を確認して、「みたいだね」「よろしくね」「こちらこそ」とお互いに深々とお辞儀をする。
「雨月さんが隣で嬉しいな」
「私も、小湊くんが隣で嬉しいよ」
にこにこと微笑み、私達は席に着いた。
「よーし、じゃあ、明日からこれでいくぞー」
「先生ー!」
後ろの席の佐藤くんが急に声を張り上げ、私はビクンと震えた。佐藤くんは「悪い、びっくりした?」と笑い、先生に向き直る。
「俺、目悪いんで出来れば前に行きたいんですけど…」
「前の列で佐藤と変わってくれる奴…」
先生のアナウンスに、がたりと立ち上がる男子生徒。
「僕が変わります」
「降谷は前の席じゃないだろ…」
「あ、いいですよ、そこなら見えるんで。悪いな、降谷」
「…全然」
がたがたと移動を始める二人に、私は脱力する。小湊くんが「大丈夫だよ」と声をかけてくれたが、私の後ろに移動してきた降谷くんは嬉しそうに席に着いた。
「よし、今度こそ、これでいいな。明日から授業が始まるから、ちゃんと時間割を確認して忘れ物しないように学校に来るんだぞ。以上。号令!」
HRが終わり、早く帰ろうと席を立つ。
「…運命」
「じゃないから」
掴まれた手を小湊くんが払い落とした。
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