RPS

□I
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【47周目】
朝、目を覚ますと、私は涙で濡れていた。

卓上カレンダーの日付は、5月。
バツ印は、まだない。

ループ、出来た。戻ってこれた。
そう言って、私は喜ばなきゃいけないのに。喜ぶべき出来事のはずなのに。
私は泣いた。唇を噛み締め、声を殺し、満たされない感情に涙を流す。

この世界から抜け出すことが私の目的だったのに。私はこの世界に頼った。彼との絆を無下にし、自分の記憶保持のためだけに、私は世界をリセットした。

あの嘘で、彼がどんなに傷付いたか。彼がどんなに苦しんだか。

彼が躊躇わずに私を殺したのは、命を狙われる中で身に付けた身を守る術だった。たくさんの人に殺されかけて、生き延びるためにたくさんの人の命を奪ってきた。その度に彼は、深く、深く、傷付いて。身も心もぼろぼろだった。

それなのに。

それなのに、私は…その傷に塩を塗り、傷を抉り、傷を大きくしてしまった。
前の世界はリセットされた。彼にその記憶はない。でも、だからって何をしても良いなんて理屈は通用しない。今日、転校してくる彼が何も覚えていなくても、前の世界の彼が私の嘘に傷付き、悲しんだのは確かなんだ。私が彼を傷付けたんだ。私が彼を人殺しにしてしまったんだ。

私に、この世界から抜け出す資格なんてない。
この繰り返される世界にずっと居続けること。
それが、私の罰なんだ。



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