RPS

□樂
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【??周目】
奈々ちゃんの葬儀は、親族だけで静かに行われるらしい。
全校集会で一分間の黙祷を捧げた後、教室に戻ると机の中には、彼女からの手紙が入っていた。

「彼女からの手紙には、なんて書いてあったの?」
『…『未来を変えて』、『幸せになって』、それから『ありがとう』だって』

昼食を取りながら、私は手紙を読み上げる。
『未来を変えて』、『幸せになって』…このふたつが何を意味しているのか、私には分かる。けれど、『ありがとう』だけは、分からない。彼女に感謝されるような事は何もしていない。寧ろ、私が彼女に感謝しなければならない立場にいる。

未来を変えるチャンスをくれたことは、勿論…
何度も挫折する私を励まし、隣で見守っていてくれたこと。

自分のために使えば彼女は何にだってなれただろうに。彼女はどうして、私なんかの為に力を使ったのだろう…。私に何を期待したのだろう。私に何を望んだのだろう。

「未来を変えるってどういうこと?」
『そのままの意味だよ。彼女のSPECはタイムトラベル。過去に戻り、未来を変えることが出来るの。私をこの世界に閉じ込めたのは未来を変えさせるため。私が無事に未来を変えられた時、SPECを解除するつもりでいたんだろうけど、私がぐずぐずしてたせいで…』

SPECの効果は彼女が死んで完全に切れたはずだ。
これでもう二度と、私は過去には戻れない。

「…雨月さんって」
『うん?』
「もしかしてめちゃくちゃ頭良かったりする?」
『…急にどうしたの?』

お弁当から目を離し、彼と向き合う。

『今の話は、ニノマエ君が教えてくれたことでしょ?』
「えー…?そうだっけ?」
『そうだよ』
「じゃあ、彼女が雨月さんに変えて欲しい未来って何?」
『…これから起こることだよ』

二週間後、彼は学校に来なくなる。
そして、その一週間後…彼は、私に会いに来る。私の記憶を消しに。

対策を練らなければ。



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