RPS

□今度から
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「今日はやけに派手だな。チンピラみたいだぞ」
「私もそう思います」
「そっスか…?」
「あー、よく夜中のコンビニにいるよな。こういう格好で屯してる若い奴らが」
「陣馬さん、それ、チンピラってことじゃないっスか!」

401と404が24時間の勤務から戻ってくると、第4機捜の分駐所に雨月がいた。息抜きついでに遊び来たと云う彼の顔はあまり疲れているように見えなかったので志摩が「サボりか…」と責めれば「まさか!寝る間も惜しんで働いてるっス」とこれまた明るい笑顔で返された。WEB解析であまりにも煮詰めてパソコンに向かっていた為、心配した糸巻から休憩を命じられたらしい。その休憩時間を第4機捜の分駐所で過ごす雨月の気が知れないが、本人は「疲れた時は好きな人に癒されたいんスよ」と艶っぽく笑った。

「…雨月、お前、伊吹に似てきたな」
「え、そっスか?」
「あいつの悪い影響を受けてる気がする…」
「ういういうい〜っ!報告終わり〜!お疲れちゃーん」

その時、がちゃりとドアを開けて桔梗に報告を終えた伊吹が分駐所に戻ってきた。

「うわぁ!理央くんのスカジャン、超シャレオツじゃん!カッコイイ〜!色が良いッ!デザイン最高ッ!何より、理央くんに超似合ってるぅ〜!」
「あー…あざっす、そんな言われると照れるっス」

志摩と九重に否定的な意見を言われた後だが、芝浦署切ってのファッションリーダーとして尊敬している伊吹に褒め千切られ、雨月は満更でもない表情を浮かべてはにかむ。人懐こい同僚の照れ笑う姿が可愛くて、眩しそうに微笑んだ伊吹は、ふと彼の着るスカジャンの前が全て閉じていることに気付く。

「ね、下はなーに着てるの?」
「え?あっ、待っ…!」

雨月が慌てて制止するも、伊吹はファスナーを全て下ろして前を全開にした。バッと広げたスカジャンの下には期待したTシャツは無く、薄い胸板と筋肉のない痩せ細った腹部があり、伊吹達は目を見開いた。

「や、あの…これは、違うんです」

色白の素肌を隠すようにぎゅっと両手で服の胸元を押さえ、腰を引いて後退りながら伊吹から離れた雨月は、視線を泳がせてしどろもどろに否定する。

「すみません、俺、一昨日くらいからずっと泊まりで…。4機捜に顔出すのに汚いままは嫌だからシャワー浴びて…、その…」

雨月に近付いた時、微かにふわりと香った石鹸の匂いはその為かと伊吹は納得する。彼の顔から首筋や耳はじわじわと紅みを帯びて、逃げ惑う瞳は水分を増して艶やかに煌めく。また彼自身が普段の口調を忘れて丁寧な言葉を紡ぐ様子は珍しく、シャワーを浴びたのも伊吹達のことを考えて身を清めてきたのだと知って、まるでこれからそういう行為でもするのかとそんな気を起こさせる。それはこの官能的な情景のせいか、相手が男であっても雨月だからか。

「…やばい、抱ける。つーか、抱く」
「伊吹ッ!」

何にせよ、結論を出した伊吹は危険を察知した志摩によって粛正された。

「いってぇ〜っ!ちょっと志摩、なにすんのさ?」
「お前こそ何してんだ!雨月に盛んな!野犬か、お前は!」
「まだ何もしてないじゃん!初体験って思っただけだし!」
「なっ…!?お前は本当に最低だな!」
「何だよ、志摩だってヤりてえって思ったべ?言ってみ?正直に言ってみ?」
「俺は!そんなこと!思っても言わない!」
「あ〜、志摩ちゃんのえっち!やっぱ思ったんじゃーん!」

そんなやりとりが本人の目の前で交わされ、顔を真っ赤にして動けなくなっている雨月に九重が声を掛ける。

「雨月さん」
「…九重くん」
「素肌のまま着るのは良くないです。体を冷やすので。せめてインナーは着てください」

九重は「必ず」と強い口調で念を押してファスナーを襟元まで引っ張り上げた。雨月は今にも泣き出しそうな顔でこくこくと何度も頷いた。

「うん、うん…。今度からそうするよ」


END
 

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