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□焼きうどん
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「そういえば、俺、ちゃんと自己紹介してなくないっスか?」
「そうだっけ?」
「俺、自分の名前名乗ってない気がするんスけど」
「別に今更いらねーよ。顔も名前一致してるしな」
「いや、でも俺が一致してないんで」
「はぁ!?お前、俺の名前を知らねーってのか!いいか、耳の穴かっぽじってよく聞けよ!俺の名は…」
「陣馬さんっスよね!大丈夫っス!結構っス!」
「…俺の名前は分かりますよね?」
「何でちょっと自信無さ気に聞くんスか、志摩さん」
「ンー、ふふっ。俺、分かった。知らないの九ちゃんでしょ?」
「あー…多分?この間隣にいた人なんスけど…」
「ああ、九重世人っつってな」
「やべぇ、想像以上にかっこいい名前付いてた」
「九重刑事局長の息子なんだと」
「へぇー…、それ誰っスか?」
「お前、マジかぁ〜?嘘だろ?」
「俺、警察嫌いなんで」
「そんな人がなんで警察官やってるんです」
「まあまあ…。けど、大変っスね。親からのプレッシャーとか、周りの目とか。偉くなったら口聞いてくれなくなるんスかね」
「どうかなー。アイツ、ちょっと人を見下してるところあるからな」
「えー、さみしいっスね。染まらないでほしいなぁ。一緒にタピオカ飲みに行けるような幹部になって欲しいっス」
「タピオカ」
「タピオカ…」
「…それはちょっと」
「ふはっ!そういうとこっスよ、ホント」
「てかさー、俺、雨月ちゃんの下の名前知らなかったわ。なんてーの?」
「ほら、やっぱり名乗ってないじゃないっスか!」
「じゃあ、自己紹介していいぞ」
「いいっスよ、そういうの!言われてやるの嫌っス」
「あーもう、いじけんなって!めんどくせぇーな」
「ねー、ねー、ねー!下の名前教えてよー!」
「理央」

ギクッとカウンターに座る雨月の背中が跳ねる。振り返ると、事件ファイルを取りに行っていた九重が戻って来ており、抱えた段ボールを机に置いてシャツの袖をまくっていた。

「雨月理央さんですよね」
「…あ、はい。そうです」
「ひゅーっ!九ちゃん、流石ぁ〜!おかえり〜」
「戻りました」
「おう、昼飯出来てっから食え!」
「いただきます」

九重は流し台で手を洗い、陣馬の隣に腰を下ろした。伊吹はカウンターに右肘を立て頬杖を付き、のんびりと噛み締めるように「理央くんかぁ〜」と呟いて、何故か急に黙り込んで焼きうどんを食べ始めた雨月の横顔を見つめる。その横で志摩が眉間に皺を寄せて「その顔やめろ」と口パクする。伊吹はチェシャ猫のように唇を三日月状に歪めてにんまりと笑っていた。

「んっむ、そうだ、九重。雨月が一緒にタピオカ飲みたいって」
「ブフッ!ちょ、何言ってんスか、陣馬さん!」
「何で?さっき、そう言ってただろ」
「いいですよ」
「「「「えっ」」」」
「買ってきてくれるんですよね?」
「あっ…いや、それはちょっと…、あの、想像してたのと違う…」

雨月が機捜本部に戻る際、改めて「今度、タピりに行きません?」と九重を誘うも普通に断られた。


END
 

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