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□青いアイス
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第3話 劇後

コンビニで買ったアイスを食べながら歩いていた雨月は、署まであと数mもないところでメロンパン号に抜き去られ、続く401号車には正門の前で追い抜かれた。車から降りた志摩と伊吹は濡れ狸よろしく全身びしょ濡れで、二人の壮大なくしゃみが駐車場に響き、雨月はそんなに雨酷かったっけと空を見上げた。重苦しい灰色の雲は晴れて、高く明るい群青色の空が広がっていた。

「どうかしたんですか?」

九重が雨月の真似をして空を見上げる。雨月は首を横に振って志摩達のことを訊ねた。すると九重は「あぁ、」と何でもないように二人に視線を送り、犯人逮捕時にスクラップ工場の冷却水に落ちたのだと告げる。

「相変わらず、やることが派手っスね〜」
「車の次は無線をダメにするなんて…」
「そんなの、犯人の罪に比べりゃ安いっしょ」

雨月はひらひらと手を振ってアイスに齧り付く。ジャクジャクと氷が砕かれる音が心地良くて、九重はソーダ味の爽やかな甘い香りに誘われるように雨月との距離を詰めた。雨月は不思議そうに首を傾げる。

「あ、食べます?」
「いりません。なんで食べ掛けを寄越そうとするんです」
「急に寄ってくるからっスよ。なんすか?」
「なんか、甘い匂いがしたから…」
「…食べます?どーぞ?」

ずいっとアイスを九重に差し出す。
九重は顔を顰めて「いらないんですけど…」と否定しつつも口を開けた。

「あーっ!!九ちゃんが理央くんとイチャついてる!」
「イチャついてませんッ!」
「嘘だ!アイスもらってた!あーんしてもらってた!ズルイ!」
「見間違いです。脳みそまで水に浸かったんですか」

九重の口から吐き出される辛辣な言葉に、雨月は「毒が強い!」と悲鳴を上げる。伊吹はニヤニヤといやらしく笑いながら九重を問い詰める。

「じゃあ、口開けて何してたの?あーんじゃないなら何してたの?」
「何もしてません」

九重はその視線から逃れるように目を逸らす。

「…だって、まだ、食べてませんし」
「ねえ、志摩、今の聞いた?認めたよ?アイス、食べようとしてたの認めたよ?」
「はいはい、邪魔しない邪魔しない」
「ちょ、なんでよ!羨ましくない?あーんとか超ご褒美じゃん!」
「早く着替えないと風邪引くぞー。…あ、バカは風邪引かないか」
「おいって!これ、抜け駆けだろ!志摩は悔しくないの?」

首根っこを掴む志摩に伊吹が抗議すると、志摩は呆れた顔をして一言「溶けるぞ」と呟いて雨月の横を通り過ぎていった。


END
 

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