女子高生探偵

□Text.01
1ページ/1ページ


〜20XX年 ○月△日 日売新聞より〜

雨月理央は今、巷を騒がせている高校生探偵だ。鋭い洞察力と推理力を持って幾つもの難事件を解決に導いた。先月起きた老夫婦殺人事件も彼女が解決したものだった。

(中略)

まだ幼さ残る16歳の雨月は、その可愛らしい容姿とは裏腹に非常にクールな性格をしており、彼女の周りには常に冷涼な空気が漂っている。しかし、それも事件現場での話である。
事件のない日は家でゲームをしたり、甘いモノを求めて食べ歩きをしたりと女子高生らしい一面を覗かせる。行きつけのお店は昔懐かしの駄菓子屋でお菓子はいつもここで補充しているそうだ。
頭脳明晰な彼女は運動神経も抜群で、太極拳の達人とも呼べる実力の持ち主だ。武術太極拳(またの名をウーシュー)の大会に出場して優勝を手にしたこともある。彼女にかかれば強盗犯など一網打尽。即、お縄だ。

そんな雨月の憧れる探偵は、コナン・ドイルが生み出した『シャーロック・ホームズ』だ。そして意外にも彼女は工藤新一の名前を口にした。彼を尊敬していると語り、探偵を目指すきっかけに工藤は関係があるかという質問には口を噤み、答えてはくれなかった。また世紀の大泥棒怪盗キッドについて尋ねると彼女は知らないと首を振った。怪盗は専門外らしく興味もないとのこと。しかし、警察に呼ばれればいつでも協力するし捕まえろと言われたら捕まえると、随分と好戦的な態度を見せた。

第二の工藤や探偵界の女神などと評された女子高生探偵、雨月理央の虜になる男性は数知れず、特に同世代の女性からの支持は厚い。

彼女のこれからの活躍に期待したい。



東京 某地区

「メディアに煽られた…まぁ、どうでもいいけど」

ばさりと投げ捨てた新聞は机の上を滑って床に落ちた。私は苛立ち、小さく舌を鳴らす。どうでもいいと言いつつも内心は新聞に…否、記事を書いた記者に腹を立てている。彼は「インタビューさせてくれ」としつこく私を着け回した挙句、勝手に詮索して全くのデタラメを記事にして掲載したのだ。そして最後の煽り文句、無神経にもほどがある。

腹の虫が収まらず落ちた新聞を破り捨ててリビングのテレビを点けた。ファンシーなメロディーと共に三人の騎士が画面に映し出される。朝食を求めて冷蔵庫を漁るも何も見つからなかった。そろそろ買い物に行かなきゃ、とそんな事を考えながらコップにお茶を注ぎ、ソファーに腰掛けた。
床に転がったコントローラを手繰り寄せてつづきからを選択すると、三人の騎士がそれぞれ違う動きでポージングを決め、画面はブラックアウトする。ローディングが開けるとベッドが数個並ぶ部屋の中心で一人の騎士が立ち尽くしていた。彼の体力は満タンだった。そこで私は、昨日の夜、宿屋に泊まってプレイを終了させたことを思い出す。

「どこに行くんだったかな?」

十字キーを操作して宿屋を後にする。

あぁ、そうだ。
仲間を迎えに行かなきゃいけないんだった。…ダンジョンまで。


end
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ