女子高生探偵

□FILE.03
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頭を撫で、喉を撫で、ピンと張った尻尾にくるくると指を絡めて遊ぶ。ごろんと地面に横になったそれは、もっと撫でろと言わんばかりに白くてふわふわなお腹を見せつけてきた。くの字に垂れた前足はふくよかで、小首を傾げてこちらを見つめるグリーンの瞳はとても綺麗だ。あざと可愛いおねだりに負けた私は、柔らかな腹部をパン職人のごとく撫で回すのだった。

されるがままの三毛猫は目を細めてごろごろと喉を鳴らしていた。

暫くの間、その猫を愛でていると太もも辺りで振動を感じた。気のせいかとポケットの中の携帯を取り出すと着信を知らせるコール画面が表示されていた。

「はい、雨月です。……殺人?分かりました、今からそっちに…え?………とりあえず、私が行くまで待っててくださいよ」

状況はよく分からないが、人が殺されたのなら行かなければ。
通話相手の慌てる声を無視して電話を切った。私は、よしよしと最後に頭を撫でてお別れの挨拶をする。

「車に気を付けるんだよ」

三毛猫はまるで返事をするように「にゃーん」と鳴いた。



現場に着いた私は当然のように立ち入り禁止のテープをくぐった。警官隊は堂々と侵入した私に驚き慌てて制止を促すが、「雨月さん!いらしたんですね」と駆け寄ってきた高木刑事の姿を見て彼らは大人しく引き下がった。

「どうも」
「聞きました?被害者は他殺じゃなくて自殺だったらしいですよ」
「自殺…?」
「はい!なんでも毛利さん…あ、毛利さんっていうのは、雨月さんと同じ探偵で、その人がその場に居合わせていたらしくてですね、先ほど解決なさったんです、けど…」

「行かれるんですか?」と問う高木刑事に「呼ばれたので」と返事をしてエレベーターに乗り込んだ。外から青いビニールシートに囲まれた部屋が見えていた。確か、25階…。カチッとその番号を押すと静かに上昇するエレベーター。
殺人だと言っていたのに。しかも、よりによって同じ探偵を名乗る人物が自殺と断言し、事件解決だなんて。

本当に自殺だったのか…?



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