女子高生探偵

□FILE.19
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「生憎、私は工藤新一も、彼の連絡先も知りませんので。あなたのお願いを聞く事は出来ません」
「そんな…!じゃあ、工藤さんを探して下さい!!」
「人探しは専門外なので」
「意地悪言わないでください!守ちゃんが…守ちゃんが死んじゃいます…っ」

ぼろぼろと重力に従って流れる大粒の涙が私を責め立てる。遂に泣かせてしまったとバツの悪さから目を逸らす。何故、目の前に私がいるのに助けを求めないのだろう。居場所も分からない探偵に何を頼むというのだろう。米花町に、東京に居るかも分からないのに。不必要な労力を費やして、守君の命を危険に晒していることに何故彼女は気付かない?

「…分かりましたよ」

野々村さんがそれに気付くまで。
彼女には工藤探しをさせておこう。

私は優先すべきことをする。

「あなたの願い、叶えてあげます」

そう言うと、野々村さんは「本当ですかっ!?」と身を乗り出して私の言葉に食いついた。私は彼女の目に溜まった涙を拭いながら肯定する。

「専門家を紹介します。ですが、あなたの協力が必要です」
「私に出来ることならなんでもします!」
「…では、今から私の言う事をよく聞いてください。このすぐ近くに毛利探偵事務所があります。そこであなたは『赤木量子』と名乗り、工藤新一の恋人だと言って大至急彼を探してもらってください」
「なんでそんな嘘を吐く必要があるんですか?」
「犯人は警察に連絡するなと言ったんですよね?それは誰にも知らせるなという意味です。勿論、警察じゃなければいいなんて甘い考えのモノではありません。もし犯人に探偵に依頼した事がバレたら守君の命は無いと思います」

彼女にはきちんと説明しないと分からないだろう。
すると、野々村さんの顔から血の気が引いた。

「ま、待ってください。探偵事務所なんかに行ったら尚の事…」
「大丈夫ですよ。あなたを尾行している人はいませんでしたし、何よりこの事はまだ私しか知らないんですから。誰にも言わなければ問題ありません」
「で…でも、工藤さんには伝えなきゃ!守ちゃんを見つけてもらえません!」
「…心配には及びません。伝えなくとも分かる筈です。"名探偵"を名乗っている彼なら尚更、ね」

私が道を作ってあげるのだ。それに気付かないようであれば、彼はその程度の人物だったということ。

「雨月さんは?」
「私は赤木さんの家に行ってみようかと。守君から連絡があるかもしれませんし、私が工藤さんなら真っ先に犯人の痕跡が残っている現場を確認します。一刻を争うのに家が留守だと困るでしょう?」
「そう…ですね。でしたら、これを」

野々村さんはスクールバッグから鍵を取り出した。それは赤木家の鍵だった。彼女は、住所とここからの近道を教えてくれたが、終始不安そうな顔で私を見つめていた。

「雨月さん、私…」
「工藤さん、見つかるといいですね?」

にっこりと微笑んで彼女を送り出す。
こんな嫌味な言い方をしても野々村さんは気付かないのだろう。



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