女子高生探偵

□FILE.54
1ページ/12ページ



「どや?えートコやろ、大阪は!!」

両手を広げ、声高らかに言い放った服部を、私は冷めた目で見つめる。毛利さんが「うん、いい眺めだね!」と大阪の街を一望し、隣では、コナン君が双眼鏡を覗き込んでいる。

来るつもりなんてなかったのに…。

私は賑わう街中を見下ろして、はぁ…とため息を吐いた。ごった返す観光客とテンションの高い地元の人間のせいでうるさいのなんのって。人混みは苦手だと、うるさいのは嫌いだと言ったのに。服部は全く聞く耳を持たず、更には毛利さんを焚きつけて私をこうして大阪に連れ出した。
コナン君が呼ばれるのは分かるけど、私を呼ぶ理由って…何。

「雨月さんも見ますか?」

双眼鏡を覗き込んでいた毛利さんが、私に譲ろうと顔を上げる。
純粋に大阪見物を楽しむ彼女が少しだけ羨ましい。

「大丈夫ですよ、見えすぎると困るので」
「それってどういう…」

毛利さんは不思議そうな顔をして私を見た。私は、「なんでもないですよ」と苦笑いを浮かべ、服部が指差して紹介していた天王寺動物園と大阪ドームと、ここ、通天閣から見える景色を目に焼き付けた。

「スマンスマン、平次君!」
「おっ、やっと来よった!」

パタパタと小走りでやって来たのは、眼鏡をかけた若い男性。彼、坂田さんは大阪府警の刑事で、服部の父親が気を利かせて彼を寄越したらしい。服部の父親も来る予定だったようだが、事件の会議があって来られないそうだ。大阪府警本部長ともなれば、忙しくて大阪を案内している暇なんてないだろう…。

「ほんで?ちゃんとあの車、用意出来たんか?」
「そらもう!平次君の言われた通り、東尻署で一番のヤツを失敬して来ましたがな!!」

東尻署で一番のヤツ…?なんだか、嫌な予感がする。
同じように勘付いた毛利探偵が「お、おい…その車ってまさか…」と服部を呼ぶが、服部はニコニコと笑うだけ。

「…服部」
「さ、行こか!」
「ちょ…押すな」

勘繰る私を無視して、服部はズイズイと私の背中を押した。仕方なく歩みを進め、通天閣を降りれば、そこにはやはり予想した通りの車が止まっていた。



大阪の街を滑走するパトカーの中に、私達は乗っていた。パトカーをタクシーのように使う服部に、「こんな車で大阪見物しろっいうのか!?」と毛利探偵がキレる。

「なんや?気に入らんのかいな…サラッピンの新車やぞ!」

…そういうことじゃない。それなのに、服部はサイレンも鳴らすかと言い出して、遂に毛利さんが口を挟んだ。連行されているみたいで恥ずかしいと。すると服部は「そんなん気にすんなや!」と前を向いて笑う。

「なんも悪い事しとらんのやし、堂々としてたらええがな!」
「…職権乱用って言葉知ってます?」
「やめなよ、理央姉ちゃん…」

コナン君に止められ、私は口を閉じる。
パトカーに乗せられてはいるが、今回は手錠を掛けられていない。それだけが救いかと腕を組んで、背凭れに寄りかかる。人生で二度もパトカーに乗る事になるとは…まぁ、前回のは覆面パトカーだったが。

車の運転手や街行く人々に好奇な、そして疑いの目を向けられて、早く目的地に着いてくれと後部座席に座る私達は思った。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ