女子高生探偵

□Text.03
1ページ/2ページ


重怠く動きの鈍い体を引きずりながら一歩、また一歩と前へ進む。この先、何メートルもない。目と鼻の先にある目的地を目指して私は必死に足を動かした。

「お、お姉さん…?」

聞き覚えのある声が背後から聞こえて、首を回す力は残っていなかったけれどゆっくりと振り返れば、そこにはランドセルを背負ったコナン君がいた。彼は私の顔を見てギョッとする。

「ちょ、お姉さん、大丈夫?酷い顔だよ?」
「顔が…酷い、のは、元から……」
「違っ、そういう意味じゃなくて!体調悪いの?ここで何してるの?」

彼は心配そうに私の背中を摩る。小学生に介抱されるなんて。つらい。つらすぎる。私はぐっと足に力を入れて一歩踏み出した。するとコナン君が後を追ってくる。

「ふらふらだけど、動いて大丈夫なの?」
「平気…あと少し、だから」
「この先に何かあるの?…もしかして、毛利探偵事務所に用事?」
「…違う、けど。一人で大丈夫だから、放っておいて」
「こんな状態の人を放って帰れないよ。どこに行くのか教えて。僕も一緒に行ってあげるから」

何度でも言おう。つらい。周りの大人は見て見ぬふりなのに小学生に支えられながら歩くなんて。それでも限界を感じていた私は彼を頼ることにした。

「…『ポアロ』」
「ポアロ?喫茶店に行きたいの?」
「うん」
「分かった。任せて」
「キミは優しいね…」

コナン君は私の手を引いて歩き出した。



「ふぅ…美味しかった♪」

ペロリと唇を舐めてご馳走様をする私の目の前には、空になったガラスの容器が三つ並んでいた。ずっと気持ち悪そうな顔で見つめていたコナン君が、この上なく気持ち悪そうにストローでオレンジジュースを飲んだ。

「あー…と。迷惑かけちゃってごめんね?」

一息吐いたところで、コナン君に謝罪する。
どうしてあんな状態に陥っていたのか。端的に言えば、餓死寸前だったというだけの話だ。ここ最近は忙しく、ご飯を食べる時間を取れなかった。気が付いたら体に力が入らず、動くたびに目眩を引き起こした。流石に何か食べなければ、と急いで行きつけのお店へ向かうも今日が定休日だということをすっかり忘れていたのだ。

これは想像以上に危険な状態だ。

そこで、他のお店を考えた時、すぐ近くに喫茶店があったことを思い出した。喫茶店ポアロ…そこならきっと、私の望む物が食べられるだろう。こうしてお店の近くまでやって来たのだが、先に体力が尽きてしまった。あと少しだと自身を励ましながら街を歩いていた。その時、コナン君に出会ったのである。

「ありがとう、キミは命の恩人だよ」
「大袈裟だよ。僕が勝手にしたことだから気にしないで。…それよりも、お姉さん。パフェ3つは食べ過ぎじゃない?」
「今日は死に掛けてたから…。いつもは1つしか頼まないよ」

コナン君があまりにも気持ち悪そうな顔をしているので、「甘いものは苦手?」と質問すると、そういうワケではないと返される。

「糖分、取りすぎじゃないかな…」
「…うーん」
「…ちゃんとした物を食べた方がいいと思う」
「そうなんだけどね、効率悪いから」
「効率って…はっきり言うけど、お姉さん、栄養足りてないよ。いつも何を食べてるの?」
「分かってはいるんだけど、飴とかチョコとか、お菓子が中心になってる。糖分を補給すると頭がよく回るから。基本、朝と昼は食べないし…夜、たまに自炊するけど、2〜3日に一回はこうしてパフェを食べてるから。お腹は満たされてるし、平気というか…」

そこまでいうと、コナン君の顔がぐにゃりと歪む。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ