女子高生探偵

□Text.03
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「それでよく、生きてるね」
「健康診断には毎度、引っかかるけどね」

なんでも心臓に負担がかかってるとか。今年も色々言われたなぁ…とぼんやりと、けれどはっきりと、汚れひとつない清潔感あふれる白衣を思い出す。

ガラスを隔て、真剣な顔で私を観察する白衣の大人たち。真っ白い部屋にひとり、取り残されて。赤いランプがぐるぐると回っていた。

「…お姉さん?」

大きな目が私の顔色を伺う。急に黙り込んだ私を不安に思ったのだろう。「気に障ること言っちゃった…?」と首を傾げられ、「まさか」と戯けてみせる。

「真似しちゃダメだよ」
「…誰も真似出来ないよ、そんな乱れた食生活」
「それも、そうだね…」

私は、パフェと一緒に注文したメロンソーダを飲み干した。グラスの中は氷だけになり、ストローが、ずぞぞ…と汚らしい音を立てる。

「さっき、お姉さんの背中を撫でた時、背骨が当たったんだ」

オレンジジュースのグラスに刺さったストローを指でいじりながら、コナン君は言う。

「見た目から細いのは分かるけど少し気になった。でも、それ以上に顔色がすごく悪くて。貧血っぽいし、心配になって手を握ったら冷たかったんだ。それなのに汗ばんでて、小刻みに震えてた。目的地がポアロだって言ってから、可笑しいとも思ったけど、ただ血糖値が下がってるだけなんだって一度は安心した。…けど、強めに手を握っても痛がる様子はないし、薄くだけど僕の手の跡が残った。これって、栄養失調で手が浮腫んでる証拠だよ」
「………」
「パフェを食べ終えてからはだいぶ顔色が良くなったけれど、手の震えは止まってないし。何より、舌が綺麗だった」
「シタ…?」
「舌。べろだよ」

ぺろっと口から赤い舌を出され、言葉の意味を理解する。

「舌苔がないのは栄養不足が原因だから。お姉さんは、お姉さんが思ってる以上に、体が弱ってるよ」

そういって、コナン君はストローに口を付けた。グラスのオレンジジュースがどんどん減っていく中、私は自分の顔を両手で覆い、ソファーからずるずると崩れ落ちる。

「なーんて、昨日、テレビでやってたんだ〜…って、どうしたの!?」
「や…うん。その…」

手の甲で口を隠し、ちらっとコナン君の顔色を伺う。彼は眼が良いらしい。素晴らしい観察眼だ。それは今、目の前できょとんと可愛らしい表情をする彼からは想像も付かないほどである。
私はコナン君から目を逸らし、ぼそぼぞと小さく呟いた。

「は…恥ずかしいね、ヒトに観察されるのって」

そんな風に見られていたことが、観察されていたことが恥ずかしい。と同時に、あれよこれよと言い当てられて他にも何か知られたんじゃないかと不安になる。自分が観察する分には問題ないのに。観察されるというのは、こうもむず痒く居心地の悪いことなのか。

「その、ごめんなさい…」
「あはは、気にしないで」

顔に集中した熱を冷まそうとぱたぱたと手で扇いでいると、コナン君は私の顔をじっと見つめ、「お姉さん、今、一番健康そうな顔してるよ」と笑った。

…ごめん、やっぱり気にして。


end

オリジナルで、夢主の食生活についてでした。
一応、栄養失調の症状や栄養不足時の健康状態などを調べましたが、ストーリーを進めるため、脚色しています。なので信じないでください。イメージです。フィクションです。
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