女子高生探偵

□FILE.42
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朝、携帯の着信音で目が覚めた。
私は布団から手を伸ばし、充電器を手繰り寄せ、本体を探し当てる。もぞもぞと布団から這い出ると電話の相手を確認せずに通話ボタンを押した。第一声を聞いて完全に目を覚ましたと同時に、電話に出たことを後悔した。

≪雨月ー!お前、俺からの着信ミュートにしとるやろ‼≫
「…ぅ、服部。朝からうるさいんだけど」

キーンと鼓膜を刺激する携帯電話から耳を離す。

≪なんや、まだ寝とったんか?相変わらず、のんびりしとるなぁ…≫
「休みなんだから別にいいでしょう」

通話をスピーカーに設定し、ベッドに放る。ぎゃあぎゃあ騒がしい携帯を無視して、腕を上げ、体をうんと伸ばす。たまらず吐息が漏れた。ベッドから立ち上がってデスクの上の時計を見ると、まだ7時だった。あと3時間は寝ている予定だったのに。はぁ…とため息を零す。

≪雨月、さっきからなんちゅう声、出しとんねん!?≫
「はぁ?まだ何も言ってないんですけど」
≪…≫
「もしもし…?」
≪お、おぉ。なんか、すまん…≫

再びベッドに横になり、携帯のスピーカーを元に戻して耳に当てる。

「それで、ご用件は?」
≪おー、実はな…≫

服部の話を要約すると、人探しの依頼だった。
長門グループの会長、長門道三の誕生日が数日後に迫っている。そこで会長の誕生会が行われるらしく、還暦祝いに彼の初恋相手を探して欲しいのだという。

長門グループといえば言わずと知れた名家だが…

「初恋って。一体、何年前の話をしてるんだか…」
≪色褪せへんもんなんやで、初恋っちゅうのは…≫
「…ふーん?キミもその口か」
≪はぁっ!?なな何言って…!≫
「うるさ…。キミの初恋なんて興味無いよ。あと、会長の初恋もね。だから今の話は聞かなかったことに…」
≪雨月、暇やろ!?≫
「忙しいです」
≪…即答しよってからに。絶対、暇やろ≫
「キミは本当に失礼だね。なんでそう、決めつけるかな…」

ごろんと寝返りを打つ。
締め切った部屋のカーテンの隙間から太陽の光が差し込み、埃がキラキラと宙を舞っていた。

≪ええやん、今回も付き合うてーな≫

余計、嫌だ。とは言えず…。

「何度も言うけれど人探しは専門外なんだ。キミの大好きな工藤さんにでも連絡したらいい」
≪工藤一人じゃ来られへんから、雨月に連れて来てもらおうと…≫
「もっと頭使いなよ。彼の保護者は既に居るんだから」

長門会長に毛利探偵へ連絡させれば一発だ。それだけで彼はやってくる。彼はそういう人だから。そう言うと、服部は拗ねたように本当に来ないのかと尋ねる。

「行かない」
≪…雨月のアホッ‼≫
「アホって…ちょっと?もしもし?」

切られた。一体、なんだったんだ。
難波の嵐は、電話でも騒がしかった。



end

『名家連続変死事件』のお誘い。
体を伸ばした時に出る声って色っぽくて、なんかイイですよね。思春期真っ只中の服部は過剰反応。彼はさながら、夢主に懐いた大型犬です。なのに夢主はまだ、知り合い程度にしか思ってない。
 

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