女子高生探偵

□FILE.47
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毛利探偵が入院したと小耳に挟み、私は授業が終わるとその足で米花総合病院へ向かった。入り口の自動ドアを潜り、ナースステーションで毛利探偵の病室を訊ねる。するとその答えはすぐに帰ってきて、私は面会簿に署名しながら待合所を盗み見た。
あっちにもこっちにも、視界に入るのは患者ではなく警察の人間ばかり。"何があった"のだろう。感謝を伝え、ペンを置いて顔を上げるとナースステーションの近くに見知った顔が並んでいた。此方に背を向けて話し込んでいる為、必然的に背後からその人達に声を掛けることになる。

「目暮警部、高木刑事」

名前を呼ばれて振り返るふたりと、その部下の人達に「こんにちは」と挨拶すると、目暮警部に「おお、雨月君」と明るく返される。この警備態勢であり得ないだろうとは思ったが一応、質問してみる。

「毛利探偵のお見舞いですか?」
「そういえば、毛利君が入院してると言っていたな?」

高木刑事が慌てて目暮警部を止める様子に、やっぱり違うんだと確信する。そんなふたりをジッと見つめ、「事件ですね」と断定した言葉で聞くと、目暮警部は高木刑事を肘で小突いた。失言したのは貴方でしょうに…。小突かれた高木刑事に同情しながら何があったのかと話を聞く。

どうやら、先週起きた銀行強盗の犯人がこの病院に入院しているらしい。

「え、でも犯人は5人組でしたよね?」
「そうなんだけど、逃走の際に事故を起こしただろう?仲間は運転手の男が死んだと思って置き去りにしていったんだ」
「あー…なるほど」

その男から事情を聞いて、男の回復次第ではそのまま署に連行したいということらしい。警察はこの男をほぼクロと見て捜査しているようだ。そりゃ、逃走車を運転していて「俺は強盗犯じゃない」なんて言い逃れが通用するはずがないし…。

「で、その男が入院している病室はどこなんですか?」
「ええ!?いくら雨月さんでもそこまでは教えられないよ」
「503号室…?」
「知ってるなら聞かないでよ!」

マジか。この部屋番号は毛利探偵が入院している部屋だ。
口を滑られせた高木刑事を怒る目暮警部にその事を教えると「なんだって!?」と目を丸くして驚いた。

「雨月君、このことは毛利君に秘密にしておいてくれ」

私はコクリと頷く。けれど、そうか、毛利探偵と同じ病室なんだ…。



ガチャリとドアを開けて503号室に入室すると、コナン君の他に3人の子供が毛利探偵のベッドを囲っていた。私の入室に気が付き、振り向いた5人に挨拶すると3人の子供が元気良く挨拶を返してくれた。

「毛利探偵、お体の具合は如何ですか?」
「あ、あぁ…まあまあだな」

そう言って毛利探偵はぽりぽりと頬を掻く。なんだかんだ言って殆ど面識がない為、私が見舞いに来るとは思っていなかったのだろう。だが、それはお互い様である。

「これ、お見舞の品です」
「おっ!悪いな…」

ガサリと小さな紙袋を渡せば、子供達が「なになに?」と集まる。毛利探偵はすぐに袋を開け、中から物を取り出した。アクリル製の透明な箱に入った鉄の塊を見て、皆は首を傾げた。

「…なんだこれ?」



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