女子高生探偵

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すると、鈴木さんと目が合った。と同時に一瞬にして笑顔が歪む。あの鈴木財閥の娘にあんな顔をさせられるのは、世界中どこを探しても私だけだと思う。

鈴木さんの異変に気が付いた毛利さんは、彼女の顔を見て

「ブフッ…!!」

吹き出した。
それが鈴木さんの気に障ったらしく、「蘭、ヒドイッ!」と顔を真っ赤にして怒った。毛利さんは先ほどの顔がツボに入ったらしく、笑いながら彼女に謝っていた。あの状況で笑うことを許されるのは、きっと彼女だけだろう…。
しかし、この状況は訳が分からない。ふたりの世界を見せ付けられている。

「…どうかしたんですか?」
「どうもしてないわよ!」
「ちょっと園子ってば。あ、今のは気にしないでくださいね。ちょっと笑顔を作るのに失敗し…んんっ」
「何でもないの!だから、こっち見ないでっ!!」
「…あ、はい」

視界に入れることさえ、拒否されるとは…。
すると、玄関先のインターホンが押される。家の中にピンポーンと軽い電子音が響いた。

「あれ?誰だろ?」
「バカねー、新一君に決まってるでしょ?」

いや、それはない。心の中で否定する。
ぞろぞろと書斎を出て行ってしまう3人の背中を目で追い、私は、早く2階の掃除を終わらせてしまおうと作業の手を進めるのであった。



訪問者は、内田麻美という女だった。
なんでも、毛利さん達の中学の先輩なんだとか。今日は工藤新一に用事があって来たらしいが、何故か、彼女は掃除を手伝っていた。

「すみません…掃除の手伝いをさせちゃったみたいで…」

毛利さんが掃除機を運びながら謝罪する。内田さんは暇だから構わないと雑巾を絞った。
彼女の用事は、簡潔に言うと、初恋相手に自分の誕生日を祝ってほしいというものだった。大学の推理研究会の仲間が今度の週末、別荘を借りて自分の誕生日を祝ってくれるらしく、その誕生会に工藤を誘いに来たのだ。

だが、どうしてか毛利さんと鈴木さんは、"工藤の初恋相手"を内田さんだと思い込んでしまったのだ。…まぁ、勘違いしても仕方ない。あれは内田さんの言い方が悪かった。

「新一兄ちゃんが来れないんなら誰か別の人を呼んだら?」
「え、えぇ…」
「じゃあ、私達なんてどうです?これでも私達、推理で事件解決したこと、あるんですよ!」

鈴木さんの発言に毛利さんが物申す。
"私達"のカウントに私は入っていないだろうと私は本棚を乾拭きする。お喋りに夢中で手の止まった4人とは異なり、私はずっとひとり、黙々と掃除を行っていた。理由はひとつ…話の輪に入れないからである。

「そうねぇ…女子高生が来れば男友達は喜ぶと思うけど…」
「あの子も来ますよ」
「ちょっと、園子、そんな勝手に…」

毛利さんの言葉に私は作業を止めて、くるりと振り返った。
私のこと、嫌いなくせに。私を餌にするんだな、と鈴木さんを睨み付ける。



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