女子高生探偵

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___死にてぇーのか、このクソガキ

ぼんやりとした意識の中に見慣れた天井を見つけた。微睡みの海を漂うように、身動き一つせず、布団の中からその天井だけを見つめて過ごす。次第に薄く霧がかかっていた視界は晴れて、意識もはっきりとしてくる。

また、この夢か…。

はぁー…と息を吐き出し、額に触れる。そこはじっとりと汗ばんでいた。
あれから、否、あの日から繰り返し見る夢がある。所謂、フラッシュバックというもので、坂田さんに拳銃を向けられた時の…ではなく、その時思い出した幼い頃の記憶が夢に影響を及ぼしていた。

白を基調とした世界に突如現れた黒い存在。
鈍く光る銀色の髪。氷のように冷たい瞳。
慣れた手つきで構えるベレッタ。
長い廊下に静かに反響する、重く沈んだ低い声。

すると、ピリリと携帯の着信音が鳴り響く。
私はゆっくりと体を起こして音を頼りに布団の中から携帯を探した。そこに表示された文字を見て、私は、またか…と眉を顰める。

『服部平次』

あの日、私を庇って坂田さんに撃たれた服部は、救急車で近くの病院に搬送された。事情聴取中、彼が無事だったと報告を受けて安堵したのを覚えている。そして、決意が固まった事も。事情聴取を終えた私は、毛利さんに連絡を入れた。「急用が出来たので先に帰ります」と一方的に用件を伝えて通話を切り、その足で東京に帰ってきた。

それからというもの、服部とコナン君からはしつこく電話がかかってくる。当然といえば当然だが、その都度、私は無視を決め込んでいた。今もそう。数分間鳴り続けていた携帯はぱったりと音を発しなくなっていた。



「いやぁ!流石、雨月君だ!」

そう言って笑うのは、事件が解決してご満悦の目暮警部だ。その隣を歩く高木刑事もまたご機嫌で、「本当ですよ、ものの数分で犯人を特定してしまうなんて」と私に笑いかける。

「大した事ではありませんよ」

そんな二人の後ろを歩く私は静かに否定する。
約束通り、事件があると私に連絡が入るようになって、たった今、ある事件を片付けてきたところだ。

「犯人逮捕は時間の問題でした。あの証拠品がフェイクだと分かれば、私がしゃしゃり出る必要はありませんでしたから」
「だけど、何でフェイクだと見破れたんだい?凶器だけで犯人を言い当てたよね」
「ですから、いつも言ってるじゃないですか」

その時、誰かの携帯が鳴る。「すまん」と一言断った目暮警部は、懐から携帯を取り出して電話に出ると、先程とは打って変わって真剣な表情を見せる。

「分かった。すぐに向かう」

通話を終えた目暮警部は私達を見た。

「殺人事件だ」



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