女子高生探偵

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現場に着くと、そこには既にマスコミが押し寄せていて、私の姿を見るや否やマイクやボイスレコーダーをずらりと並べて取り囲み、パシャパシャとカメラのフラッシュを焚いた。

「雨月さん、今回の事件をどう見ていますか!」
「ちょっと…、」
「警察だ、そこを通してくれ」

記者達の間を縫って進む目暮警部の後に続く。
ギィ…と音を立てて開いた扉の先には家主と思われる男性と見知った人物がいて、「明日の結婚式は」「息子さんの会社の贈賄の疑いは」など質問を飛ばす記者を何とか押さえ込み、私達は森園家の屋敷に足を踏み入れた。

「警視庁の目暮です!事情は大体聞きました。行く先々で不幸を巻き起こすその疫病神にね…」

疫病神と呼ばれて、人聞きが悪いと反論したのは毛利探偵だった。
その瞬間、強い力で手を引かれ、私は警察の中から連れ出される。ここへ来る途中、事件の通報者が毛利探偵だと聞いた時からこうなる事は予想していた。だが、彼に会ったところで、あの日の事を問い正されたところで、話す事は何もないのだ。

「よお、雨月」

私の視線の先で、にこやかに微笑むコナン君は、内心穏やかではないと私の手を強く握り締めている。

「お前、何で電話に出ねーんだよ。服部からの電話も無視してるだろ」
「………」
「おい、ここに来てまでだんまりか?聞いてるんだから答えろよ」
「…私は、事件だと言われてここに来た。キミと余計なお喋りをしに来たんじゃない」
「余計なお喋りって、おい!待てって!」

バッと手を振り払うと、今度は腕ごと引っ張られる。

「っ…痛いから離して」
「あのなぁ、何があったか知らねーけど、俺達は雨月が心配で電話してたんだぞ。あんな事があった後なのに一人で事情聴取受けたんだってな?大滝警部も心配してたよ。事情聴取が終わったら病院に行くって話だったのに、いつの間にかいなくなってたって。その後で蘭から急用で東京に帰ったって聞いた。…なあ、どうして全部自分一人で片付けようとするんだよ。何でいつも…」

コナン君はそこまで言って俯いてしまった。
私は口を噤んだまま、彼の様子を窺う。

「…言いたくない、話したくないって言うんならそれでもいい。けど、だったらせめてそう言ってくれ。何も分からないのに一方的に無視される俺達の気持ちも考えてくれ」

そういって、静かに解放される腕。コナン君はそれ以上、何も言わなかった。



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