女子高生探偵

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「それで…、事件って何?」

あれよこれよと指定された場所に足を運べば、何の説明もなく提無津港に停泊していたクルーズ船に乗せられた。私は、与えられた一室のツインベッドの一方に腰掛けて腕を組み、荷物を漁る服部をジト目で見やる。

「ちょい待ち。確かこの辺に仕舞ったはず…。あ、あったあった!」

そう言って取り出したのは、『服部平次様』と書かれた郵便物。

「中身見ていいの?」
「見な分からんやろ」

手渡されたそれを確かめると、裏には『古川 大』と差出人と思われる人物の名前のみが記入され、住所等は書かれていなかった。中にはこの船に乗る際、乗務員に見せた古い一万円札が10枚、手紙が1通入っていた。手紙には、『事件の依頼をしたいから小笠原まで来て欲しい』という旨とお札を見せれば船に乗れること、封筒に入っている10万円は依頼料であることが記されていた。

「雨月ってお金貰って依頼受けた事あるか?」
「あるよ」
「まじかいな…。意外とケチな商売やっとったんやな」
「断ると余計に気を遣わせるって学んだからね。まあ、でもこれはキミの好きにしたらいいと思うよ。依頼を受けるのはキミだからね」

全てを封筒の中に戻し、「私だったら全額貰う」と一言添えて服部に返す。服部は納得していないようで、微妙な表情を浮かべていた。



夕食の時間になっても服部が目を覚まさない為、私は置き手紙を残し、レストランへと向かった。広い船内の廊下を歩いていると前から血相を変えて走る男達がやって来て、私は「あっ!」と声を漏らす。

「毛利探偵!コナン君!」
「あ、お前は!」
「そっか!探偵って理央姉ちゃんの事だったんだ!あれ?でも、二人組って…」
「え、何?」

話が読めず、首を傾げると「おい、毛利!立ち話は止せ!」と怒鳴る一人の男。ハッとして廊下を走り出す毛利探偵達を不審に思い、彼らと走るコナン君を追う。

「ね、何かあったの?」
「ああ、20年前にあった強殺事件の犯人がこの船に乗ってるらしいんだ」
「わぉ…。じゃあ、これは捜索中ってこと?」
「いや、今からそいつの部屋に行って確かめるとこ」

犯人と思われる老人は、この船が港を出てからずっと部屋に篭っているのだそうだ。

「ここだ!1号室!」

そこは見覚えのある廊下と部屋。「さあ、鍵を開けてくれ!」と強面の男に言われ、乗務員がロックを解除する。開け放たれた部屋はもぬけの殻だった。

「ワシは下を探すから、毛利!お前は上を頼むぞ!」
「は、はい!」

彼らのやり取りに違和感を覚えながら、私は隣の部屋…2号室の鍵をポケットから取り出す。

「隣は嬢ちゃんの部屋だったのか…」
「ええ。私の、というか、私達の部屋ですが」
「私達?」

「ねえ、もしかしてさ…」と尋ねるコナン君を部屋に招き入れる。パチッとライトを点ければ、ベッドの上ですやすやと眠る、服部の姿があった。

「やっぱり…」
「言っとくけど、今回も例に倣って彼に巻き込まれただけだから」
「そりゃ、このツアーに参加するってなったら俺も雨月を誘うよ」
「え、これツアーなの?」
「はぁ?服部に何だって聞かされて来たんだよ?」
「事件の依頼だって」
「え?事件…?」

コナン君と私はお互いに顔を見合わせ、ぱちぱちと瞬きする。

「…とりあえず、こいつを叩き起こそうか」
「そうだな、話はそれからだ」



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