女子高生探偵

□FILE.66
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いつもは、事件が起こると目暮警部の命令を受けた高木刑事が私に連絡してくるのだが、今日は珍しく佐藤刑事から連絡があり、「どうか力を貸して欲しい」と電話越しに頭を下げられた。私は狼狽えながら協力する旨を伝え、一体何があったのかと説明を求める。

≪殺人容疑で捕まえた犯人が容疑を否認しているのよ。だから、明日の午前10時までに真犯人を見つけてもらいたくて≫
「成る程…」
≪詳しい事は高木君と合流して聞いてくれる?≫
「分かりました」

…ということで、待ち合わせ場所の百貨店前で待っていると、背後から「理央お姉さーん!」と呼ぶ女の子の声がした。首だけ振り返った私の腰に思い切り抱き着いたその子は、いつの日にか足を骨折して入院した毛利探偵の病室で会った女の子だった。彼女の後を追って太った男の子とそばかすの男の子がやって来て、私はあっという間に三人の子供に囲まれる。

「えーっと、こんにちは…?」
「「「こんにちは!」」」

子供達は元気な挨拶を返してくれた。すると、再び自動ドアが開く。

「ちょっと、皆、待ってよ!」

取って付けたような帽子とサングラスを身に付けたスーツの男が店から出て来て、私は思わず、顔を顰める。

「こんにちは、高木刑事」
「雨月さん!」
「どうしたんです、その格好」
「変装してるんだよ!雨月さんにはすぐ見抜かれちゃったけど!色々、込み入った事情があって…」
「そのようですね。その込み入った事情と事件の概要を…」

教えて欲しいと続けようとした時。私はハッとして目の前の高木刑事を押し退けた。高木刑事は「うわぁっ!?」と情け無い声を上げて、ファーストフード店の看板に打つかる。

「な、何するんですか!急に!」

人の行き交う店内を見回し、感じ取った奴らの気配を探す。だが、たった一瞬…彼らに気を取られたその一瞬のうちに、惜しくもそれを見失ってしまった。赤みがかった茶髪の女の子は我に帰り、「消えた…」と呟く。コナン君の背後からそっと顔を出し、怯えた目で私を見上げる。コナン君はというと、鋭い眼光で私を睨み付け、茶髪の女の子を庇うようにして立っていた。

「………」
「あのー…雨月さん?」

高木刑事が遠慮がちに声を掛ける。

「どうかしたんですか?」
「いや、ちょっと…知り合いが居たような気がして。気のせいだったみたいです。すみませんでした、突然突き飛ばしたりして。怪我しませんでしたか?」
「大丈夫ですけど。驚きましたよ、怖い顔してお店に入って行くから万引きでも見たのかと」
「…万引きの方が数百倍良かったかもしれません」

警戒心剥き出しの二人を極力見ないよう努め、早急に場所を移ろうと百貨店を後にした。



殺されたのは、村西 真美さん…容疑者である東田さんと同じマンションに住む、職場の上司である。死因は絞殺で、彼女の部屋のバスルームで見つかった。発見時、東田さんは酒に酔った状態で彼女の部屋のベッドで眠っており、部屋は入口の扉の鍵もチェーンロックも掛かった密室で、その扉の鍵のつまみやチェーンロック、彼女の首に巻き付いていたビデオコードには彼の指紋が残っていた。以前から二人は仕事でよく打つかっていて、彼はその日も飲み屋で「彼女にガツンと言ってやる」と友人に息巻いていたそうだ。
東田さん曰く、確かに仕事で事あるごと難癖付けられて村西さんを恨んでいたけれど、殺したい程憎んではいなかったと容疑を否認しており、明日シカゴで行われる娘の結婚式に出席したいのだと泣きながら訴えた。その言葉を信じた佐藤刑事は明朝までに真犯人を捕まえるよう高木刑事に命じ、偶々その場に居合わせた少年探偵団と『事件狂い』の私が助っ人に選ばれた。

「これで5台目…」
「多過ぎねえか、パトカー」
「何か事件でもあったんでしょうか?」
「だからー!」

高木刑事は耐えられないとばかりに声を上げる。

「逃げてる犯人とそれを追ってる僕と佐藤さんを捜してんの!」

帽子とサングラスだけの下手な変装を歩美ちゃんはギャングみたいと褒めた。高木刑事は、「仕方ないだろ?」と帽子の縁に触る。

「極秘捜査なんだから…」
「とにかく、まずはあのお店…被疑者になっている東田さんが事件直前に立ち寄ったという、あの居酒屋からだね」



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