LONG STORY

□能ある鷹は爪を隠せず
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立体機動の適性検査。のち、立体機動訓練。
体重以上の重りを背負っての兵站行進。巨人知らずの馬を使った馬術訓練。頭の出来で左右される座学、兵法講義。正確かつ迅速さを求める技巧術…そして、言葉通りの、対人格闘技。

『この世は、実力が全てだ』

訓練兵になって、初めて、おじさんの言葉の意味が理解出来た気がする。

「ふぁ〜…」

朝の5時。私はうんと伸びをする。
明け方の薄暗い陽を浴びながら柔軟を行い、ランニングを開始する。体力作りと足腰を鍛える為に始めた走り込みは、今では私の習慣となっていた。

成績上位者10名にのみ与えられる内地行きの切符。

私には必要のないモノだし、順位なんて、壁の外に出てしまえば何の意味も持たない。…いや、巨人が攻めてきたら、の間違いか。
私は、入団式で内地行きを希望していた者達のことをぼんやりと思い出す。
どうして彼らは、内地を…壁の中を安全だと思えるのだろう。壁が壊されたあの日、私達は壁の外の恐ろしさを知ると同時に、壁の中の危険性を学んだはずなのに。壁は、一時の安全に過ぎないのだと。



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