LONG STORY

□立つ鳥跡を濁す
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卒業まであと何ヶ月という月日が流れた。
が、私は変わらず、劣等生として104期のケツにいた。
未だに私を売春婦だと、教官に贔屓されていると疑う者が居る限り、私はここに居続けなければならないし、何より、10位争いに巻き込まれたくなかった。

いつの日からか、劣等生というメッキは、周りの人間によって剥ぎ取られ、実力者として認められつつあった。しかし、そのことが10位を狙っている人達に多大な影響を及ぼした。私がそのランキングに食い込んでくる、というものだ。
教官がバックに付いている私なら、10位内に入る可能性がある…と。

『この世は、実力が全てだ』

本当に、そうなのだろうか。
この頃、おじさんの言葉が揺らぎ始めていた。

『君の容姿は、人を良くも悪くも惹きつける』

確かに、私は良くも悪くも注目を集めた。

『だからこそ君は誰よりも輝ける』

輝きたい。おじさんの為に。それを私は証明したい。

「理央、おはよう」
「…おはよ」

一人で朝食を食べていると、ひょこっと顔を覗かせて私に挨拶する金髪の男。
挨拶を返せば嬉しそうに笑い、カタンとトレーを置いて私の前の席に座り、その隣にもう一人の男が腰を下ろす。

「僕の名前は?」
「……あー」
「あー?」
「…アルフレッド?」
「惜しい!惜しいよ、理央!アルミンだよ」
「全然惜しくねーよ。アルミン、お前の採点基準、優しすぎじゃね?」
「『アル』まで当たってて『ミン』で間違った。十分惜しいよ」
「…マジかよ」

青緑色の大きな瞳が印象的な男が、げっそりとした顔でアルミンを見た。
私はパンを千切りながら「もう、『アル』で良くない?」と返す。

「人名って覚えるの苦手なんだよ…」
「んー、あだ名みたいで良いけど…やっぱりちゃんと呼んで欲しいな」
「…そういうもん?」
「あ?俺?俺は別に…気にしねーけど」
「理央、彼の名前は分かる?」
「知らない」
「…やっぱ、気にするわ」

彼はパンを噛み千切り、水で流し込むと、一呼吸置いて自己紹介をしてくれた。

「エレンだ。エレン・イェーガー」
「エレン・イェーガー。エレン・イェーガー。エレン・イェーガー…」
「…僕の名前は?」
「…あー……だめだ。抜け落ちた」
「…俺の名前は?」
「………ごめん、もう一度教えて」



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