LONG STORY

□窮鳥懐に入るも猟師は殺す
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開門を告げる音が鳴り響く。ゴゴゴ…と音を立て、その大きな門は開かれた。号令の合図で自由の翼を背負った調査兵団が壁外へと飛び出していく。そう、今日は第35回目の壁外調査が行われる日だった。

馬に跨り、列を成して歩く調査兵団を私は人混みの中から見ていた。視察に来た男3人が、先頭を闊歩する。それだけで彼らの地位が何処に属するか、分からない私ではなかった。

『この世は、実力が全てだ』

私の考える『実力』と、おじさんが言っていた『実力』は、違うのかもしれない。解散式でのことを思い出す。私は、特待生として訓練期間を終えたが、これを実力とは呼べない。否、呼びたくない。

「あっ!理央だ!おーい、理央〜!!」

ゴーグルの男が私に気付き、ぶんぶんと腕を振った。これから壁外へ出ると言うのに、なんて緊張感のない人なんだ。そんな笑顔の隣に、如何にも機嫌の悪そうな顔があり、前を行く男は困った顔で私を見た。

相手が一人なら手を振っても良かったが、私は右手を胸に掲げ、彼らを真っ直ぐ見つめ返した。偉大なる兵士達へ。尊敬の念を込めて。金髪と黒髪の男は、一瞬驚いた顔をしたが、その後は満足そうな顔で前を向いた。

「ヤダヤダ!そんなの嬉しくないから!前みたいに振り返してよー!」
「………」

しかし、当の本人は、納得しなかった。
本当に何なんだ、あの人は…。

私はスッと敬礼を解く。が、その手を振り返す事は出来なかった。

「よぉ、特待生サマ」
「何、お前。今度はあの人を狙ってるワケ?」

馴れ馴れしく肩を組んだ二人組の男は、私の腕をがっちりと拘束した。「ちょっと、ツラ貸せよ」と人混みから私を引きずり出す。ハタから見れば仲の良い友人同士に見えるのだろうけれど、彼らが誰だかは勿論、知らない。こんな人の居る場所で騒ぎを起こしたくなかった私は、彼らに従って歩いた。



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