Wisteria

□第一話
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「頼む、理央!協力してくれ!」

そう頭を下げてお願いする桂に、雨月は困惑する。

「桂さん、あなた自分が指名手配犯だってこと忘れてませんか?」
「桂じゃない、お兄ちゃんだ!忘れてなどおらぬ。俺と会うことで理央に迷惑が掛かるのも分かっている。だが、これは理央にしか頼めないことなのだ」
「そんなこと言われても…」
「頼む、理央!この通りだ!」

桂が危険を冒してまで、警察の雨月に会いに来たのには理由があった。桂のペットである『エリザベス』が遠山珍太郎という極悪奉行に捕らえられてしまったのだ。どうにかエリザベスを助けられないかと考えた時、警察で顔の利く雨月が思い浮かび、こうして頼みに来たのである。

「遠山はお金さえ積めば何でもやる男です。忍び込んで、取引を持ち掛ければ応じるんじゃないですか?」
「それが警察の言う言葉か!エリザベスを救出するついでに取り締まれば良かろう!」
「桂さ…お兄ちゃんこそ、メインがエリザベスの救出じゃないですか。僕もあんな奉行所、綺麗に掃除してやりたいですよ。でも、組織に属してしまうと中々動けないものなんです…」
「理央の噂は聞いているぞ。貴様、幕府に仕えてからも派手に暴れているそうじゃないか。意外と支持者が多いそうだな。反乱でも起こす気か?」
「やめてください。僕は法に則って裁くと決めたんです」
「なら、俺も裁くか?」
「…そんな風に言わないでください」

雨月は、桂から視線を逸らす。警察という身分でありながら、犯罪者の桂とこうして顔を合わせていること自体、あってはならないことなのだ。すると、ファミレスの窓の外に見慣れた人影が三人、歩いているのを見つける。ガタリと音を立てて立ち上がった雨月に、桂は行儀が悪いと注意する。

「桂さん、奉行所を取り締まるのは無理ですけど、僕が良い人紹介しますよ」
「桂じゃない、お兄ちゃんだ」

そうして連れて来られた銀時、新八、神楽の三人は、目の前に並べられた料理に涎を垂らしていた。

「どうした、食べぬのか?金のことは気にするな。今日は俺が持つ」
「手ぇ付けるんじゃねえぞ、てめえら。この面は、何か企んでる面だ。またロクでもねえ話持ち掛けにきた面だよ、こりゃ」

しかし、桂を疑う銀時の目は、目の前のパフェに釘付けだった。



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