Wisteria

□第五話
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松平が痴漢の容疑で捕まったのは記憶に新しく、盗人『怪盗キャッツイアー』に騙され、警察手帳と財布を盗まれたのも上記に関連した事実である。その松平に仕事を頼まれた近藤、土方、沖田、雨月の四人は、松平の指示に従い、『大江戸遊園地』へとやってきた。入場ゲート前の生垣に身を潜め、松平は愛娘の栗子を監視する。そして栗子の前に現れた金髪の男にライフル銃を向けた。

「野郎、ふざけやがって。栗子はな、てめえが来るのを一時間も待っていたんだよ。手塩にかけて育てた娘の一時間…てめえの残りの人生できっちり、償ってもらおう。おいトシ、お前、ちょっと土台になれ」
「待たんかい!ヤツってあれか、娘の彼氏ぃ!?」
「彼氏じゃねえ!あんなチャラ男、パパは絶対認めねえよ」
「喧しいわ!お前こそ警察庁長官なんて認めねえよ!」
「土方さん、俺もアンタが真選組副局長だなんて絶対認めねえよ」
「オメーは黙ってろ!」

土方は、やってられるかと踵を返す。仕事を休んでまで上司の娘のデートを邪魔する義理はない。また、そんなくだらない事に付き合っているほど、暇ではない。帰ると言った土方に松平は、誰もデートの邪魔をしろとは言っていないと否定する。

「俺はただ、あの男を抹殺したいだけだ」
「もっと出来るか!」
「あんなチャラ男が栗子を幸せに出来ると思うか?いや、俺だって娘の好きになったヤツは認めてやりてえよ。悩んで色々考えた。それで抹殺しかねえと結論に…」
「色々考え過ぎだろ!近藤さんよぉ、この親バカに何とか言ってやってくれ」
「誰が近藤だ。殺し屋『ゴリラ13』と呼べ」

近藤はサングラスをかけてライフル銃を装備していた。

「何やってんのアンタ。13って何だよ」
「不吉の象徴…今年に入って13回、お妙さんに振られた。おい、とっつぁん!俺も手伝うぜ。俺は男のくせにチャラチャラ着飾った軟弱なヤツが大嫌いなんだ!」
「近藤…」
「小さい頃から妹のように思ってきた栗子ちゃんをあんな男にはやれん!行くぞ、とっつぁん!」
「おう!」

生垣から飛び出していく松平と近藤。土方は二人を止める為、沖田と雨月を呼ぶ。だが、沖田もまたサングラスとライフル銃を装備していた。

「俺は殺し屋『ソウゴ13』…面白そうだから行ってきやーす」
「うおーい!」
「わーい、初遊園地ー!楽しみ〜!」

「土方さんも早く早く!」と手招きする雨月は、水色に反射するミラーサングラスを付けていた。

「ちょ、待て!お前のそれは何か違う!」

園内に入り、栗子と七兵衛が最初に選んだ乗り物は、メリーゴーランドだった。二人の乗った白馬から少し離れた白馬に跨り、ライフルスコープから七兵衛を狙う自称『殺し屋』の三人は、馬が上下に動くから狙いが定まらないと嘆く。

「いつになったら奴らに追い付けるんだ?距離が一向に縮まらねえぞ」
「縮まるか!これはメリーゴーランドだぞ。土台ごと一緒に回ってんだよ。永遠に回り続けるわ!」
「まわれ、まーわれ、メリゴーラン♪ってことですね!」
「お前は一旦落ち着け…」
「遊園地なんて来たことねえからよく分からねえよ。大人の遊園地なら入ったことあるけどよ」



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