小説

□木曜日午後11時12分
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静かになっていた。





佐根与喜男はインスタントコーヒーを飲んでいた。





夜であったが、昼間のことをかれは思い出した。




喫茶店は客で混んでいた。





「一口20万円とは高いな」佐根与喜男は、いった。




「お買い得ですよ。高くないですよ」T社の魅利光司はいった。





佐根も魅利もホットコーヒーを飲んでいる。





「自由の条件は平和でなきゃいけない」傍で華氏矢裕一(かしやひろかず)は、いった。





「僕がいってるのは治安のことです」華氏矢はそういって、コーヒーをひとくち飲んだ。





「それにしても何も起こりそうにないがな」佐根は、いった。





「暗黒だあ」華氏矢は、いった。





「なにが」佐根は、いった。





「世の中が」華氏矢は、いった。





「君も一口どう?」佐根は華氏矢に、いった。





「高すぎるよ」華氏矢は、いった。





「じゃ、私はこれで」といって魅利は席を立って喫茶店を出ていった。





「出資者を募るにしても20万円は大きいよ」魅利が帰ってから佐根は、いった。





「あれも奴隷制だよ」華氏矢は、いった。





「日本はひどいな」佐根は、いった。





「うん」





「今日は暑い」





店内は冷房が効いている。





「権力犯罪やな」華氏矢は、いった。





(おわり)

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