君と僕の間にあるモノ。
□好きな事に一直線な年頃
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( 視点・??? )
でも、結局オレはアイツの事、なんも知らない。
ふと、そんな事を考えて、オレはかりかり、と文字を描く手を止める。
アイツの事が気になるのは、結構前からだが、ここまで何もオレはして来なかった。
目の前に開いたノートには、少しだけ勉強した後と、落書き。
そして、そのノートの隣にはホットココア。
いつも、母さんとか友達には、甘いもんの飲み過ぎだっ、て言われるけど。
オレは甘いもん好きだから。
す、とココアの入ったコップを手に取り、オレはそれを口に含んだ。
そう言えば、昨日もココア飲んだな。
むしろ、今日も帰ってきてからココア飲んだ。
本当、飲み過ぎかもしれない、とオレは思った。
だけど、ココアとか飲んだり、温かい物を飲むと、心がぽかぽかする。
とか、そんな変な感じがするから。案外好きだ。
そして、温かい飲み物以外で、心をぽかぽかにしてくれるのは、やっぱりアイツ。
「オレ、やっぱおかしいわ。うん」
オレは、ずず、とココアを啜りながら、少しだけ顔が熱くなるのが分かった。
好きなんだよな、たぶん、アイツの事が。
アイツって言うのは、前も言った通り。
同じクラスの、異質なかんじのする女子の事で。
ほとほと、面倒くさいヤツを好きになったものだ、と自分に少しだけ呆れる。
だけど、アイツの事考えると、少しだけ嬉しくなって。
なんか身体がぽかぽかして、心なんてどこにあるか知らないけど。
なんだかすべての物が、満たされるような。
そんな感覚がするから。
「・・・・・・・・・。少しくらい、喋りかけてみよう、かな」
オレは、今まで本当に何もして来なかった。
好きなのかもな、とどこかで自覚しながらも、行動できなくて。
友達にも、相談は少しくらいした。
相手は誰だ、ってのは言ってねえけど。
だって言ったら、絶対からかわれんのは目に見えてる。
どんだけ草食系男子なんだよ、とか。
友達に言われた。
だけど、行動できねえんだよ。
しょうがねえじゃねえかよ、そんなの。
はあ、とオレは小さくため息を吐いて、机に突っ伏した。
だけど、突っ伏した瞬間、おでこにシャーペンが刺さった。
「って・・・・!!!」
オレはばっと飛び起き、シャーペンをどかした。
(な、なにやってんだ、オレ・・・・)
自分で自分の行動を笑うしかなかった。
どんだけ周り見えてないんだ。
地味に痛いじゃねえか。
「ま、まあ、でも・・・、目とか入んなかっただけマシか」
はは、と遠い目で苦笑をもらした。
そして、今度こそしっかりとシャーペンを筆箱に仕舞い込み、今度こそ、机に突っ伏す。
机、と言うより、ノートがひんやり、と冷えていて、少しだけ冷たい。
こうしてる今も、思い浮かんでるのはアイツの顔な訳で。
どんだけ周りとか見えないほど、恋に溺れてんだよ、と自分を心の中で殴ってみる。
すると、棒人間が棒人間に殴られるという、シュールな絵が頭の中に浮かんだ。
その絵に、静かに1人で盛大に吹き出し、突っ伏したまま笑いをこらえる。
なんだ、そのシュールな絵は。
「っくく、・・・・しゅ、シュールすぎる・・・っ、ふ」
ひーひー、と笑いすぎて呼吸困難だ。
どこに笑える要素があった、とツッコまれたら終わりだが。
とにかく、オレには大爆笑するほどのシュールさだったんだ。
まあ、よく、オレの笑いのツボが分からない、と友達に言われるくらいなので、
オレの笑いのツボは、だいぶ人とずれてるのだと思う。
「・・・・・はーっ、笑った。笑った。
・・・・・・・・・。アイツはどういう時に笑うんだろ・・」
ぽつり、とまたアイツの事を呟いた。
もうこんな自分ヤダ、と思っても、やっぱり好きな物は好きだから。
これは変えられないし、少しだけ変えたくない。
「まあ良いや・・・。・・・・・・やっぱ、まずは会話から始めよう」
机に突っ伏したまま、右手を机の下でぐっ、と握った。
そうだな、行動しなきゃなんも始まらねえ。
オレは、今度はぱっと起き上がり、ココアをぐい、と飲み干した。
いっきに飲み干したせいか、口の端から少しだけココアが零れた。
だから、それをぐいっ、と服の袖で拭い、ばん、とコップを置く。
「うしっ、明日から頑張るぞーーーーっ!!」
1人で叫んだら、一階から、「リント、うるさいわよ」と母さんの声が聞こえた。
だから、部屋の中だけで、すまん、と小さく呟いて、オレはベッドにもぐり込んだ。
今日はもう寝て、明日アイツに話しかけてみる。
心の中が、凄くどきどき、わくわくとしていた。
明日が来るのが楽しみ過ぎる。
オレは、マジで頑張るぞ、と寝る前にもう一回だけ意気込み、布団をかぶった。
明日がオレにとって、小さなスタートラインだ。
(この時のオレは知らなかった。
まさかアイツが、あんなに辛い思いをしてるなんて・・・・)