☆バックナンバー U☆

□拍手お礼
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   拍手お礼SS



 鏡に映る自分の姿をジッと見る。

白いレースのワンピースには胸元にピンクのリボンが付いている。


  この、ワンピースが可愛いって事は分かるんだけど・・・
「似合ってるのかなぁ〜?」

鏡を見ながら、心の声が漏れだしてしまった。

「オレの見立てに文句でも?」
「きゃっ!」

食糧補給のために寄った港町は
ファッションの街としても有名らしく
リュウガ船長やソウシさんの勧めで衣料の少ない私は
シンさんと服を買いに来ていた。

シンさんに連れられ入ったブティックは
どれも素敵な服ばかりで気後れをしていると
シンさんは何点かの服を見繕い渡してくれた。

それを試着してみようとフィッティングルームに入っていたのだが
鏡の前でオドオドしていた私に、急に背後から声が掛かったので
些か驚いてしまった。

「し、シンさん!! な、何で入ってきてるんですか!?」
気恥ずかしさにまかせて少し怒り気味に言うと
「店員に入れられたから、だ」
と、表情も変えずに言われた。

「て、店員さんに?」
「オマエが遅いから
『着替えのお手伝いをなさっては?』
って押し込まれたんだ」
と、眉を寄せて私に教えてくれる。

「わ、私が遅いから・・・ですか」
「もうそれで終わりか?」
シンさんは傍らにある服の山を見て聞いてくる。

「あ、あの・・・まだ、コレしか着てなくて・・・」
「はぁ!? 1着に何時間かけてんだ?」
驚きと呆れたような表情をして私の頭をポカリと叩く。

「あイタ!」
頭を撫でながらシンさんを見上げると、ジッと観察されていることに気付いた。

「・・・あ、あの・・・?」
  やっぱり、似合ってないとか?
シンさんの視線が気になって、私は頭に手を置いたまま固まってしまう。

「悪くない」

一言。

たったそれだけ言うと、シンさんはチョットだけ頬を赤くして
部屋を出てしまう。

「シンさん?」
私は慌ててドアの所まで行くと
「今日はそれ着て歩けよ」
と、言い続けて
「今着てるもの、そのまま着て帰る
残りは包んでくれ」
と、店員さんに言っているようだった。

「シンさん? まだ他は合わせてませんよ!?」
私がオロオロと声をかけると
「ソレが身体に合うなら、他も合うだろ」

「そうじゃなくって! 似合わないかもしれないですから」

「バカめ、お前が着れば何でも似合うだろ?」

「!!」

シンさんの言葉に私は息を詰めた。

「シンさん・・・も、もう1回! もう1回言って下さい!!」
「五月蝿い! 何でも良いから早くしろ」
外では店員さんがクスクス笑っているのが聞こえる。

「し、シンさ〜〜ん!」
「グズグズしてるとデートする時間が無くなるぞ!」

「! デート・・・」
噛み締めるように呟いてると部屋の中に店員さんが入ってくる。

「奥様、旦那様がお待ちですよ
急いでお包みしますね」

「おくさ・・・!」

私は顔が熱くなるのを感じつつ、シンさん後を追っていった。
  デート! シンさんとデート!!
  それに、それに、奥様って!!
  シンさんが旦那様!?

「シンさん! 聞こえましたか!?」
ニヤケる顔を抑えることは出来ずちょっと俯きながら小声で訊ねる。
「何がだ? 奥様?」

からかうようなシンさんの声が聞こえる。
照れ隠しのようにシンさんの袖口を掴み
「イジワル!」
と、唇を尖らせる。
「キスを強請ってるなら、人の居ない所でしろよ?」

私はますます顔を赤くしてしまう。
「紅白でメデタイな?」
からかわれながら、私達は買い物を終え
デートへと向かったのだ。





    ☆end☆
      11.7.22


 

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