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□拍手お礼
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  ☆拍手お礼SS☆


 人知れず、溜め息を吐くと
海の波がざわめいて
『聞こえたよ』
と、返事されたような気がする。


船尾の手摺にもたれ掛かって
溜め息に返事をしてくれる波に訴えるように私は語りかけた。

「シンさんは、グラマーでセクシーな人が好きなんだって・・・」
バシャン バシャンと波が船に打ちつける。
『あんたとは正反対だね』
そんな言葉が聞こえるよう。


「わかってるよ! どうせ私はチンチクリンです!!」
私は海に向かってイーーーッと悪態をついた。

ザッパン!

まるで仕返しをされたように、大きな波が船に当たり
飛沫が私に飛んでくる。
「・・・そんなに怒らなくっても良いじゃない・・・」
顔に掛かった波飛沫を袖口で拭いながら
私は再び溜め息を吐く。

「私だって、もう少しすればもっとグラマーになるんだよ?」
私は海に向かって胸を寄せてみせた。
せせら笑うように波が引く。

「! だ、だって! お母さんだってそれなりに胸あるし・・・
成長遅かったって言ってたもん!!」
私は声を大にして、海を覗き込むように訴えかけた。


ポカッ!

「イタイ!」
急に頭をはたかれ、驚いて振り向くと
まるで奇妙な物を見るような目で私を見詰める
シンさんが立っていた。

「・・・もしかして、聞いてました?」
私は、顔が一気に熱くなるのを感じつつ
シンさんに尋ねてみた。

「1人で船縁に寄りかかるなって言ってるだろ!」
シンさんは、私の質問に答える事なく
ガミガミと小言を言い始めた。

「ぅう・・・すみません、もうしません・・・」
私は俯いて、小さな声で謝った。

「ったく・・・! お前がセクシーだろうが
グラマーだろうがどうでも良いから
兎に角心配させんじゃねーよ!!」

シンさんが最後にそう言って私の頭に手を乗せ
クシャクシャと撫でた。

「・・・どうでも・・・って、ヤッパリ聞いてたんですね!」
私は顔を上げてシンさんを見ると
すました感じで
「あんな大きな声で独り言言うのはお前くらいじゃねーか?」
と笑いながら言われた。

「や、波と話してたって言うか・・・
何か、気になっちゃったモノで・・・」
私はもごもごと口ごもりながら言った。

そうしたらシンさんが
「チンチクリンでも良いって言ってんだよ。」
クシャクシャにした頭にキスをして
「どんな姿だろうと、お前が良いんだからな。」
そう言って私を優しく抱き寄せてくれた。

幸福感に包まれながら、海を見ると
『見てられないわ』
とばかりに、一面凪ぎいて、夕日をキラキラと輝かせていた。


  ☆end☆

 
 

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