☆バックナンバー U☆

□イースター
1ページ/1ページ


   ♪拍手お礼♪



 朝。
寝返りをうって薄っすらと目を開くと、既に彼はいなかった。

「ん〜〜〜っ!」
目を覚まそうと声を上げて、残り香を求めるように彼の枕を抱きしめると
枕の下に何かがあることに気付く。

「・・・何?」
私はムクリと起き上がると、手に当たった何かを掴んでみた。
掌に納まる握り心地の良い物体。
私はソレを目の前に出してみた。


「・・・キレ・・・イ!」

ソレは小さな貴石でレースのような模様が造られた卵だった。
朝の日差しに石がキラキラと光っていて
私はウットリと眺めていた。

「何だ、もう見つけたのか?」
背後の扉の方から声がして、私はパッと振り向いた。

「シンさん!」
詰まらなそうな声とは裏腹に、その表情は優しく
私が見詰めているとその優しい表情のまま
ベッドサイドまで来てくれた。

「暫く隠しとこうと思ったのに・・・
案外目敏いな?」
シンさんはポンと私の頭に手を乗せてそのまま乱暴に髪を掻き乱した。

「ちょっ! シンさん!!」
私は抗議の目を向けるが、気にする様子もなく
「その卵、よ〜く見てみろよ」
と、笑っていた。

「え?」
私は言われた通りソレをじっくりと眺める。
と、卵の3分の1位の位置に筋が入っているコトに気付いた。

私は、その筋に沿って、恐る恐る力を加えると
その卵はパッカリと開き、中から金で出来た
精巧な船の模型が出てきた。

「わぁ! スゴイ! キレイ!!」
私は感嘆の声をあげ、その卵に見入った。
よく見ると、開いた卵の内側にも美しい模様が描かれていて
見れば見るだけ新しい発見があるようで楽しくなってくる。

「エッグハントでもしようと思ってたんだが・・・
まぁお前が気に入ったんなら良い」
シンさんはそう言いながら、私に向かって何かを差し出したので
卵からシンさんの手に視線を移した。

「台座もあるから、机にでも飾っとけ」
と、やはり美しい模様の入った猫脚のような
3つの爪がある台をくれた。

「・・・あ! もしかして、今日ってイースターですか?」
私はシンさんから台座を受け取りながら、ふと思い出して聞いてみた。

「何だ、イースターを知ってるのか?」
「はい、この前降りた島で買い物してる時に
お店の人が教えてくれました!
クリスマスみたいにご馳走食べたり
卵で遊んでお祝いするんですよね?」

私は満面の笑みでシンさんに言うと
優しかった表情が急に硬くなった。

「・・・ん、間違ってるわけじゃないが
余りにも極端な知識だな」
「えっ? 違ってました??」

私が戸惑っていると、再び優しく笑って
「まぁ、オレ達には馴染みのない風習だからな・・・」

と、さっきクシャクシャにした頭に
チュッ っとキスをして
「そろそろ朝飯だ、先に行ってるぞ」
と、部屋を出てしまった。

私は、もう一度卵を見てから台座に乗せると
急いで着替え、シンさんの後を追って食堂へ向かったのだ。




    ☆end☆

         11.4.15
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ