☆バックナンバー U☆

□拍手お礼
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   ☆拍手お礼SS☆

「イタッ!」

小気味良いリズムでタマネギを切っていた私は
ちょ〜っと手を滑らせ、指先をスッパリ切ってしまった。

「バカ・・・大丈夫か?」
ナギさんがフライパンの火を止めて
心配そうに私を覗き込んできた。

「・・・大丈夫、です! ちょっと、血が出てきちゃったので・・・」
私は、自分のドジ加減を嘆きつつ
ナギさんに心配をかけないよう笑顔を作って
指先をギュッと握って胸元に寄せた。

「悪いが、今手が離せないから
自分でドクターんトコに行ってくれるか?」
ナギさんは申し訳無さそうに私に言って頭を撫でてくれる。

「だ、大丈夫です! じゃ、医務室行ってきますね」
ペコリと頭を下げ、私はキッチンから医務室へと向かった。


「・・・・・・」
急いで医務室まで来た私は、ドアの前でふと動きを止めた。
「ノックが出来ない・・・」
切れた指先を右手で抑えていたので
流れてきた血で両手が汚れている。

「すみませ〜〜ん! ソウシ先生〜!」
声を掛けるが返事は無い。
「ど、どうしよう?」
私は何とか肘でドアノブが回らないかとチャレンジするが
一回りする前に戻り、扉は開かなかった。

「う、どうしようかな?」
と、呟いた瞬間。
「何してるんだ?」
と、背後から声がかかった。

「あ、シンさん!」
振り向くと訝しげに私を見下ろすシンさんが居て
私は顔を見た途端安心したのか
切ってしまった指先が ズキン と痛んだ。

「あ、あの、指を切ってしまって・・・
先生に手当てを頼もうと」
私が説明している間に、シンさんは医務室のドアを開け
私を通り越して中に入ってしまった。

「え?シンさんもどこかケガを?」
シンさんに駆け寄り顔を覗くと、ちょっと呆れた顔をされ
「ドクターは今船長のマッサージ中だから
暫く来ない!
ほら、消毒してやるから座れよ」
と、イスを引いてくれた。

「あ、お願いします!」
私はホッとして、勧められたイスに座り
ケガした指を差し出した。

シンさんはテキパキと私の傷を手当してくれて
最後に包帯を巻くとその上からそっとキスをした。

「・・・えっ!?」
シンさんの行動に驚いて目を丸くすると
「痛みの引くおまじない・・・
って、何やってんだ、子供みたいに・・・」
と、照れたようにそっぽ向いてしまった。

「あ、あ、イエ! 痛み、引きました!!
ありがとう、シンさん!」
私も何だか恥ずかしくなりながらお礼を言う。

「ちょっと、痛みが出てきてたんですけど
今ので治った気がします!」
ニッコリ笑ってシンさんを見上げると
フッと笑ってシンさんも私を見てくれる。

「単純だな!」
笑いながらシンさんの顔が近付いて来る。
私は柔らかな表情のシンさんに見惚れていると
フワリと柔らかな感触が唇に当たる。

「!!」
私はシンさんの唇の触れた自分の唇に手を当てて
シンさんを見詰めた。

「もうケガするなよ!」
シンさんはニヤリと笑んで私を残し
医務室をササッと出て行った。

その後姿を見詰めながら
私はニヤケる顔を、必死に戻そうと努力するのだった。



   ☆end☆

       11.5.16


 

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