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□拍手お礼SS
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   ☆拍手お礼SS☆



 同じ日に出会い、同じように船上の日々過ごし
同じように思いを募らせた筈なのに
アイツの気持ちはシンへ向かい
オレの思いは一方通行だった。


遠くに彼らを見つけ、何とはなしに眺めてしまう。

気ままな主人に懐く仔犬。
まさにそんな様子の2人を見ていると
胸の奥がジリリと焼けて痛みを持つ。


いつもイジワルな物言いをし、アイツを困らせては
オレがフォローをしているように思えていたが
返ってソレが自身を“イイヒト”に仕立ててしまった。


シンが、人に心を開いていないことは解かっていた。

いや、オレ自身だって同じように人間関係に嫌気が差し、こうして海賊になった。
不幸比べをするわけではないが
種類は違えども傷付いていることに変わりないだろうに
アイツはオレ達の傷を癒し、凍てつく心を融かしてしまった。


好きに、ならない訳がない。


まるで刷り込みのようにアイツを慕い
親鳥を追い回す雛のように、何処に居ても
視線を奪われる。


ボンヤリとそんな取り止めも無いことを考えているうちに
じゃれ合っていた2人の様子が変わっている。

背の高いシンに、背伸びしてアイツがキスをしている。
シンはそれを享け、アイツの額を指先で突き笑っている。

長いこと共に船に乗っていたが、到底見ることの無かった笑顔。
ソレを見てアイツは怒った顔をしているが
シンはそれすらも嬉しそうに見て笑っている。

そして、無造作に両手で頬を包み込み
強引にキスをした。
一見乱暴そうに見えるが、本当は大切な宝石を扱うように
優しく、丁寧に扱っていることを知っている。


アイツが、幸せそうに微笑むと
焼けていた胸の奥の痛みが、ジンワリと和らいだ。

シンの様にアイツの心を奪ったりは出来ない。
家族のような、兄を慕うような愛を
受け取って喜ぶことしか出来ない。

何時までも“イイヒト”で良いのだ。と、言い聞かせるように
溜め息を吐いて、彼らから視線を外し
遠くの空を見た。

昼間の空にぽっかりと浮かぶ月が見える。
まるで自分のようだ。

夜を照らすでもなく、太陽のように輝くでもない。
真昼の月。


もう直ぐ、満月だ。



     ☆end☆
        11.5.28

 

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