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□☆拍手お礼☆
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  拍手お礼♪



「ずるい・・・」
私の唇から、思わず言葉が零れ落ちると
ソウシさんとトワくんが私を見た。

ハッとして、口を両手で塞ぐと
ソウシさんが優しげな微笑をくれる。

「ふふふ。 妬きもちかい?」
ソウシさんはその優しい笑顔のまま尋ねると
「え? 妬きもち!? ただのケンカですよ??」
と、トワくんが目を丸くした。

私の頬は、コレでもかって程に熱を持ち始めたのがわかる。
  私ったら、恥ずかしい!!
目を閉じて、小さな溜め息を付くと
肩にポンと手が乗ったのが判った。

「ソウシ、さん?」
「ほら、キミが止めに行ってあげなよ」
「そ、そうですね? ちょっと、ハヤテさん可哀想な感じでですし・・・」

3人は甲板で銃を構えたシンと剣を構えたハヤテを見た。


「お前の頭はオガクズが詰まってるんじゃねーか?」
「ンな訳ねーだろ! オレだってちゃんと脳みそ入ってるっつーの!!」
「入っててもトワの飼ってるネズミ以下だな!」
「なっ! もういっぺん言ってみろ!!」
「何度も言わないと理解も出来ないのか?
哀れなもんだな〜」
「コイツ! ただじゃおかねー!!」
「ふん。 どうするのか、見ものだ」

シンとハヤテはヒートアップしながら言い合いを続けているが
構えた武器を揮う事は無かった。

しかし、一触即発な状態に変わりなく
私はビクビクしながら2人の近くに歩み寄った。

「あ、あの・・・そろそろ、ケンカ、止めませんか?」
私が声をかけるが、2人は私を見ることも無く

「うるさい! 今忙しいんだ!」
「そうだ! コイツを片付けたら日誌に
ガラクタ整理が済んだと書かなけりゃいけないからな!」
「テメー! 誰がガラクタだって?」
「お前だ!」
「言ったな!!」

と更に言い合いが酷くなる。


  ズルイ!

私は2人のケンカを見ているうちに
ムカムカと腹が立ってきた。

「いい加減にして下さい!!」
大声が船中に響く。

シンとハヤテのケンカなど珍しくも無いので
食事の仕込をしていたナギと
自室で酒を飲んでいたリュウガも何事かと甲板を覗く。

「ハヤテさん、私が頼んだこと、覚えてますか!?」
「えっ!? あ、あぁ、何だっけ?」
「甲板掃除! 今日はハヤテさんの当番だから
お昼までに済ませてください!」
「あ。 うん。そうだったな・・・」

私はさっきの恥ずかしさで頬が熱くなったのとは違う
顔の熱さを感じる。

「シンさん! さっき、私が言ったこと覚えてますか?」
「あ? あぁ、休憩を取れ。 ってやつか?」
「このケンカが休憩ですか!?
私がお茶を持っていっても飲んでくれなかったのに!!」
「・・・・・・」

「もういいです! 2人でずっと楽しんでてください!!」
私はプゥッと頬を膨らませ、2人に背を向けると船室へと向かって歩き出した。

「ぉお・・・やっぱり、女は強ぇ〜〜な」
船長室の前でリュウガが呟く。

「シンもハヤテも、大概にしとけよ?
アイツ、お前らのためにオヤツやオカズを
一生懸命作ってたんだぞ?」
ナギが呆れ顔で2人を窘める。

「ふふふ。 2人がケンカしてるから怒ってるんじゃないよ?
たぶん、自分は相手にしてもらえなかったのに
2人は楽しそうにケンカしてるから、妬きもち妬かれちゃったんだよ?」
ソウシは笑いながら「羨ましいね」
と、つずけた。

シンと、ハヤテは持っていた銃と剣を力なく下ろし溜め息を吐く。

「お茶、飲みたくなったな・・・」
「オレ、モップ取りに行くかな?」
2人はそれぞれの方向に歩き出す。

「・・・何となく、納まりましたね?」
トワがホッと溜め息と吐いて笑うと
「ね、彼女が止めるのが、1番でしょ?
私達が止めても、火種が残るからね」
と、ソウシも笑う。


船の上は最近、1人の女の子のお陰で
平和が続いている。






       ☆end☆
          11.7.1


 

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